2017-01-01から1年間の記事一覧

レトリック

前回の記事、最初文案がトータルで頭の中に降って来た時、多岐に亘るし分量も多いけど、勢いで一気に書けそうな感触だった。 ところが、準備作業が多かった。打込み(ごく簡単なものとはいえ)、SoundCloud へのアップ、ワールドのスクショ、なにより手こず…

ピグワールドをめぐるあれこれ ※追記しました※

ピグワールドの「もようがえ」(建物やデコレーションで街の景観を作ること)に凝り始めた。そうすると、ピグワールドが現実の雛型というより、ぎゃくに現実風景が「ピグワールドっぽい」と見えてくる。これは現実と虚構が私の中で逆転し始めた、危ない兆候…

続・ふいんき

イメージが書法を決めるのではない。書法がイメージを決めるのだ。 自然の印象を音楽に置き換える「描写音楽」に興味がない。 その置換が可能だとも思ってないが、仮に可能だとしても、 自然が表層に見せている現象をなぞることに興味がない。 現象を成り立…

チェリビダッケ、耳を澄ますテンポ

チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送交響楽団のドビュッシーとラヴェル、4枚組CDがあった、とまた叔母の書斎の記憶で申し訳ない。 これです。 うち1枚分が『海』のリハーサル風景だった。 完全主義者チェリビダッケと、ものすごく高性能というわけではな…

単位

いつだったかスキージャンプの実況で「89メーターごじゅう」という表現を聞いた。 「ごじゅう」とは何ぞや?? いっぱんに、1つの値を、2つの単位を付けて表現することが多い。これは日本語特有の表現だろうか? 「1メートル50センチ」とか。 これはたんに私…

ふいんき

雰囲気が悪なのではない。 特定のシテュエイションに結びついた、例えば「伊勢神宮の棟持柱の死角で人知れず欠伸をするロバート・スミスのような雰囲気」であっても、もっと漠然と捉えがたい「雰囲気」であっても。 問題は作曲における手順だ。 「作曲」は「…

Buddy Guy with Jack Bruce and Buddy Miles 'Mary Had A Little Lamb'

バディ・ガイをほぼ知らないのですが、3年前、のぶはる氏がこちらの御記事 で紹介下さった動画の1曲目にびっくりしたのでした。 ブルーズの定型「12小節」 ⅠⅠⅠⅠⅣⅣⅠⅠⅤⅣⅠⅠ の最初4小節を端折って、8小節 ⅣⅣⅠⅠⅤⅣⅠⅠ でリフレインする構成の曲というのは、他に例…

4度

「音楽に sus4 の解決を持ち込むな」は私のスローガンだけど、「sus4」がダメなのではなくて「の解決」がダメなのだ。常套手段だから。 4度への好みを、私は強く持ってる。 子どもの頃、「ドミソ」の和音にもう1個音を足すとしたら、 の、 1「ドレミソ」は、…

音楽の基本要素

音楽の基本3要素はリズム、旋律、和声、と義務教育で聞かされる。この説をまともに採用する楽典があるか知らない。 厳密でもないし、音楽の多様な在り様への目配りも無い。 「旋律」は音高と「リズム」で出来ている。一方が他方を要素として含む2つを並列し…

メモ(作曲と演奏、クラシックとジャズ)

私にとって、音楽≒作曲。 クラシックでは作曲者がいちばん偉いに決まってる。演奏者の仕事は、作曲者の意図を正確に形にすることが全てだ。 と思ってるので、私のNHK交響楽団の評価は高い。身近にN響を貶す方が多いと前に書いたが、思い当たるのは、じゃあ逆…

音楽と救い 音楽は救い

「癒し」という言葉を蔑視するのは言わずもがなだが、その私が、音楽に「救われた」と発言することが少なくないのだった。 私が救われるのは、「表現」の対極にある、純粋に音の戯れであるような音楽に。 ハイドンとか。 ある時救われたくてクラウトロックに…

最初に買ったCD

私が自分で買った最初のCDは、ストラヴィンスキー「ペトルーシカ」ブレーズ/クリーヴランドか、King Crimson "Starless and Bible Black" か、どちらか。 私はプログレのCDをあまり買わない人だった。叔母の書斎でアナログ盤を聴いて過ごして判った気になっ…

小さな羊飼い

むかし武満のドキュメンタリーでワンシーン、印象に残った。 仕事場で、難しい顔でピアノに向かって作曲する武満。 響きを探り当てようと鍵盤をまさぐる指が、おもむろにドビュッシー『子供の領分』第5曲「小さな羊飼い」の一節を弾きだす。 笑ってしまった…

いろいろ記憶があやしい

私の記憶だと、ストラヴィンスキーとラヴェルは一緒にシェーンベルク「ピエロ・リュネール」(1911)の譜面を目にし、両者とも「いかん!」となり、ストラヴィンスキーは「3つの日本の抒情詩」(1913)を、ラヴェルは「ステファヌ・マラルメの3つの詩」(191…

S / N 比

若い頃は精神生活に妥協が無かった。 文章でも、「書く」ことについて十全かつ厳密だっただけでなく、「書かない」ことについて徹底してた。 接続詞を使わないことにこだわった。論旨を明確に示し得ていれば、接続詞を置かなくてもその前後の関係が、順接な…

sakaifomalhaut(酒井康志): Miku Hatsune sings "Kew. Rhone."

酒井康志氏による、初音ミクが歌う "Kew. Rhone."!! 酒井氏は作曲家、鍵盤楽器奏者、テルミン奏者、バンド 'FOMALHAUT' のメンバー(「リーダー」というご紹介で正しいでしょうか?)、バルトーク「ミクロコスモス」を全曲、ミクに歌わせてしまった方でも…

一緒にしてくれるな

いっぱんにどの作曲家についても、「〇〇のファン」という括りが価値の共有を保証しない。その作曲家の、どこを、どう、聴いてるのか、好きなのか。 ではあるけれども、ファンを自称する者同士の会話に最も齟齬を生じるのは、ドビュッシーだ。 それはドビュ…

メモ(空耳アワー)

つべで「空耳アワー」をよく見るのだが(放送で見たことは殆ど無い)、「ホモ」「オカマ」「ゲイ」がいつも笑いの対象にされてることと、セクハラ(場合によって性犯罪)に対して寛容な表現が少なくないことが、いくら昔だからって通らないだろう、と思う。…

武満徹「ドリームタイム」

最初に知った武満は何だったか? 実家にあったアナログ盤2枚組『武満徹~作曲家の個展~'84』か、あるいは松田洋子『薫の秘話』中のネーム 「武満徹『エアー』」(最上品美のセリフ、むしろわけわからない音楽の代表として) を読んだのが最初だったかも知れ…

泣くポイントは懐かしさじゃない

「星の王子さま」ではみんな泣くのだ。「不思議の国のアリス」で泣けなくては! 私はジャズをまったく知らない。先日アメーバピグの音楽フロアでマイルズの 'So What' を聴かせて頂いた。このエポックメイキングな "Kind of Blue" を「ちゃんと聴いたのはこ…

平均律クラヴィーアのパロディ

ふつうに泣ける。 原曲が Matching Mole だということを措いて、ふつうに。 でも、このアルバムでは他に Genesis、King Crimson、Pink Floyd、Robert Wyatt、ELP の曲がカヴァーされてるけど、どれも熱心に聴く気になれなかったので、やはり Matching Mole …

説得力、イマジネイション

説得力とは。 ヒトの想像の及ぶ範囲には限界がある。ふだん関連付けて考えてないあの事とこの事とはこう繋がってる、と示し、ハッとさせ、腑に落ちさせる。 むかしTVで、外国のCMの特集番組があった中で、献血を呼び掛ける、ヨーロッパのどこか(ドイツだっ…

馴染む、理解する

この記事 の中程で、「それまで理解できなかったものが『理解できる状態になる』ことの内実に、『馴染む』こと以外の要素ってあるのだろうか?」と書いた。 ドビュッシーやジェネシスに音楽美の範疇を見出していた小6の耳が、シェーンベルクの無調になってか…

散歩される音楽

ライヴのアイデア。 概要 美術館か水族館のような内部構造の建物。 その各所に数十個のスピーカを配置する。各スピーカでそれぞれ別々の音の出来事が鳴り続けている。それぞれの出来事は、間欠的でもいいし、持続的でもいいし、パターンの反復でもいいし、そ…

「おばさん」の定義

テレ東の「Vの流儀」を毎週見てた。 Wiki によるとこの番組名での放送は2010年10月5日~2012年3月27日なので、もう5~6年前か…(Wikipedia「ロック兄弟」の項。ちなみに私は「ロック兄弟」という番組名を今回初めて知った) V系がものすごく好きという自覚は…

静謐は信頼

国で括って、イギリスはこう、アメリカはこう、と乱暴に一般化して語りたくないのだが、ロックの聴衆の鑑賞態度については、あまりに画然と、イギリスとアメリカとの間に違いがあると見える。 アメリカの聴き手は、音楽を聴きに来てるのではなく、騒ぎに来て…

Jaki Liebezeit

ヤキ・リーベツァイトが1月22日に亡くなっていたのを、今日になって知りました。 この曲のタイトルは、実家のアナログ盤の、裏ジャケでは 'Bel Air'、レーベルでは 'Spare A Light' とリストされていました。 裏打ちバスドラムにびっくりしました。 小6~中1…

ドビュッシーのピアノ曲の謎

ドビュッシーのスタイルを明確に打ち出した「牧神の午後への前奏曲」の完成が1894年。 「ペレアスとメリザンド」の作曲が1893~1902年。 歌曲はドビュッシーが生涯を通じて作曲したジャンルで、作風の変遷を追うのに便利なのだが、「ビリティスの3つの歌」が…

「ノイズ」

以下、音楽の1ジャンルとしてのノイズ・ミュージックを鉤括弧つきの「ノイズ」と書き、一般的な意味の噪音=ノイズと区別します。 この記事 を、今回言い換えてみます。 「ノイズ」とは畢竟「聴き方」なんだろう。 私が「ノイズ」作品を聴いた範囲では、例…

なつい

私は「懐かしさ」で音楽を聴くことがない。 曲を聴くことで、その曲が発表された時代を思い出すとか、聴いた時私がたまたま置かれていた個人的状況を懐かしさを伴って思い出すとかということがない。 時代ということについては、そもそも世の中に行われる同…