Ray Shulman のベースの、ぶっとい音色による、精緻なタイム感。
Gentle Giant の長所は「アンサンブル能力」にある。かつ、その能力は「作曲」を具現するためのもの、入り組んだ符割で多声部が噛み合う対位法を精緻に音化するためのもので、アンサンブルそのものをひけらかすためのものではない。
なので、個別のプレイヤー、例えば Ray Shulman を「いちばん好きなベーシスト」として挙げる、ということは起きにくいかも知れない。
Gentle Giant においては、ベースはウワモノで、他のパートと対等の「声部」を受け持つことが要求される。
同様に「バカテク」とされるバンドといっても、Yes は「ソリストが5人いる」みたいなバンドだ。
GG における Ray Shulman のベース・パートと、Yes における Chris Squire のベース・パートは、どちらも「よく動く」「ベースの仕事以上の仕事をする」けれども、Shulman のラインの自由さはすなわち GG の「作曲」の自由さの具体化であって、Squire のソリスト的自由さとは、内実がまったく違う。
私が常日頃いちばん好きなバンドとして Gentle Giant を挙げるのは、私がロックを「作曲」で聴く人だから。
このベースのリフが好き。静かで、なめらかで、音色が澄んで、正確で、グルーヴがある。
この訃報ちょっと私自身びっくりするほどコタエてる。