この曲について2つの疑問があって、2つは互いに関連してる。
① 1'08"~ 1'14" の2小節は、なぜ1小節ではなく2小節なのか?
② この箇所の弦のメロディを書いたのは、マーティンなのかマッカートニーなのか?
①について。この箇所は 0'09"~ 0'15" の2小節の再現である。2度目に出すときは尺を縮めるべきなのにそれをしないのは、自己批評能力の欠如ではないか?
昔あるバンドのリハでこの曲のヴォーカル・パートを担当した(結局本番ではやらなかった)。私はうろ覚えで、4回目の Once there was a way の出を1小節分フライイングした。記憶の中で、当然そうあるべき曲の姿として、1小節分刈り込まれてた。
②について。この再現の箇所には、1度目には無かった弦のメロが加わる。
私は勝手な想像で、バンド演奏の録音を終えてオーケストレイションを任されたマーティンが、この箇所の冗長に気付き、新たにメロを加えることによって「間をもたせた」、1度目の単純な繰り返しになることを避け、これを以て2小節もあることのエクスキューズとしたのだ、くらいに思ってた。
改めて日本語版ウィキペディア「アビイ・ロード」で確認すると、この曲の「オーケストレーション&指揮者」にはジョージ・マーティン、ポール・マッカートニーの2人がクレディットされてる*1。
マーティンが書いたのかマッカートニーが書いたのかの差は、このメロがいつ時点で書かれたのかの差でもある。もしマッカートニーが書いたのだとすれば、当初から、尺を詰めることによってではなく、メロを加えることによって冗長を冗長でなくするプランだった、ということになる。
以上は、ビートルズ研究をお尽しの方からすれば、とうに回答の出てる話題なんだろうけど。
私は "Abbey Road" B面のメドレーをビートルズの中でとくに好きというわけじゃない。メドレーであることに創造性を認めないし、マッカートニーの書いた箇所はそれ自体としても、私がマッカートニーに、ロックに求めるものと違う。
ただ、この 'Golden Slumbers' を改めて聴くと、3回出て来る Sleep pretty (darling, ...)で、コード E に歌メロ a → g(gisではなく)をぶつけるところが面白い。
それと、歌い出しが、コードが Am7(ハ長調のⅵ)であるうえに、歌メロがその 7th の g、なところ。C6 と思ってたらベースが a で入って来る。これはこういう響きとしてこのまま受け取ればよいので、Am7 か C6 かどっちかに解釈せねばならないというものじゃないと思う。
'Carry That Weight' で 'You Never Give Me Your Money' が回想されるところとか、そういう「長尺を構成するための工夫」がもっとあって然るべきだ。
関連記事:
*1:'Something' 'Here Comes The Sun' はマーティン、
'Golden Slumbers' 'Carry That Weight' 'The End' はマーティンとマッカートニー。