この曲については以前書きました。今回はそのうち、この曲の作曲手順についての推察の部分を再掲します。
「浸るべき質感」が表に立つ箇所もあるけど、むしろ、造形のインパクトに驚く。
この曲は頻りに転調するけど、E を以てこの曲のキーとする。
ところが、曲開始のルートは A。しかも出合頭に増4度の重なり。ここの歌メロはサビと同じだから、つまり「サビ始まり」の「サブドミナント始まり」の「増4度始まり」。
ふつうにトニック上のサビが現れるのは、ようやく 1'32" 目*1。
歌い出しは gis。トニック E に対してはふつうに3度だけど、曲開始の響きは a、dis、gis の「増4度、長7度」ということになる。
こういう場合、先に思い付くのはどっちのサビなんだろう? 素直なトニックの方が先にあって、コード付け替えを試して得られたものを曲冒頭に持って来たのだろうか?
あるいは、トニックの方は素直すぎて「ひらめき」としては弱く、曲の形に仕上げる動機にはなりづらいだろうか? 「曲開始の響き」の発見がまずあって、これが作曲の動機だろうか?
つまり、鍵盤上で、下声 a の上で、内声を d ~ f の範囲で半音刻みで動かし、上声を e ~ gis の範囲で全音刻みで動かして、響きを探り、「曲開始」の楽想をまず得る。このうち上声の動きが「ミ→レ→ド」と読み替え可能なので、そのように注釈したのがトニックのサビ、なんだろうか?
この曲は転調も多いし、テンションコードも多い。「硬質な甘美」。
再び増4度が出て来るのはアウトロだけど、この時のルートは G。直前のコードが DM7 なので、これをドミナントと読み替えてるのだろうか? DM7 の長7度の cis がそのまま次の G 上の増4度として引き継がれるのが美しい。