T.Sasaki「スパイキッズ2006」(曲に即して ②)

T.Sasaki「スパイキッズ2006」

 

この過去記事

で、0'59" 目の「♪失敗は許されない」の箇所について、

「歌メロが楽節終わりを8分音符でみっちり埋めて次のサビにそのまま流れ込むのが好き」

といってたんだけど、ここはさらにもう一歩突っ込んで、ここをこの形にしている要因は何なのか、あるいは逆にここがこの形であるせいで曲構成にどういう影響が出てるか、思い巡らす対象になり得る、と気付いたのだった。

 

そもそも、この曲サビは、約9小節の長さで、3回出て来る*1

0'07"~ 0'23"、1'02"~ 1'18"、1'48"~ 2'05"。

1回目のサビは、半拍食うシンコペイションで始まり、前半の楽節のフィルインとして、4小節目にベースとギターのオクターヴ・ユニゾンでこういう音形が奏される。

3回目のサビも同じ形。

ところが、2回目のサビは、「半拍食うシンコペイション」の位置と「フィルイン」の位置が入れ替わって、5小節目が半拍食い、フィルインはサビの手前、1コーラス目の終わりの位置にあって、サビを導き出す(フィルインは、音程は a、h、cis じゃなくて h、cis、dis に変わってるけど、リズム形は同じ)。

 

で、この「サビの手前、1コーラス目の終わりの位置」というのがすなわち、先述の 0'59" 目「♪失敗は許されない」の位置。

ここをこの構成に決めた手順を、想像してみる。

想像①。この歌メロの「楽節終わりを8分音符でみっちり」は、0'50" 目「♪遠く離れてても」からの流れで必然的に決まってる、譲れない造形であって、その影響で2回目のサビの入りが1拍目アタマになった。そのぶん、5小節目を半拍食いにした。そのぶん、フィルインをサビ手前に移動した。

聴き手にとっての効果としては、サビ入りが半拍食いじゃ無くなって平板になってることにいったんがっかりし、5小節目でこれが出て来て、がっかりを撤回する。

想像②。そのがっかりとがっかり撤回の効果を効果として仕込む意図が最初からあり、「半拍食い」と「フィルイン」の位置を入れ替え、そのプランに沿って「♪失敗は許されない」の造形が決まった。

どっちなんだろう?

 

巧みだなあと思うのは、ここでのフィルインが「dis」終わりなこと。サビは「Esus4/D」のコードから始まる。フィルインからサビに流れ込む時に、ベースが素直な長音階の順次進行で d の ♯ まで上がってから d の♮に変位する効果が、そこそこ目醒ましい。

*1:原曲である、ユニット「スパイキッズ」による「スパイキッズ」にはサビが4回ある。「スパイキッズ2006」では、4回目のサビに当たる歌詞に、別のメロが充てられてる。2'18"~ 2'39" がそれ。