以前すこし触れたけど、私はアングラガルドを好きで、アネクドテンを解らない。
アングラガルドは「作曲」で聴ける。アネクドテンは「出音」だけがある。
いっぱんに、ロックにおいては、「出音」のかっこよさで聴かれ評価される、ということが多いんだろう。で、こういう要素は、リアルタイムで聴かないとピンと来ないことが多いのではないか。
アネクドテンのデビュー・アルバムがなにがしかの衝撃を以て受け容れられたということがあるのなら、それはひとえに1993年に出たというタイミングの為せるところなのではないか。
もちろんひとくちに「作曲」といっても、それがなにがしかの音の「組織化」を指すとして、その対象はいろんなレヴェルがあって、和声や対位法レヴェルだったり、もっとミクロに音響レヴェルだったりする。
私の「作曲」認識は偏狭に過ぎるかも知れない。世の中では「出音」含めて「作曲」と見做されてるのかも知れない。
Kate Bush "The Dreaming" はべつだん和声が斬新だったりはしない。出音が前作までと較べてガラッと変わったことが衝撃のまずもっての理由だったんじゃないか。
ちなみに私は、Bush の「『完璧主義』を『誠実』と履き違えてる」点で泣ける。それはサウンド・プロダクション全般についてのことで、私のいう「作曲」に限った話ではないけど、ここまで来ると無条件で敬服する。
09月11日、目醒めるとこれがイヤーワーム化してた:
当初何の曲か思い出せなくて、おたずね曲にするつもりで4小節の譜面に起こし終わったところで曲を思い出した。↑の譜面はその後耳コピした。
Kate Bush 'Cloudbusting'、"Hounds Of Love"(1985年)所収。"The Dreaming" 以降の「同じくらい完璧」な3枚のアルバムのうちの2枚目。
0'43"~。
もっと低弦のリフという印象だったけど、この音域だった。ヴァイオリンとチェロのユニゾンに聴こえる。
MV の元ネタを知りたくなった。あと、小ネタをいろいろ仕込んでる気配があったので、それについても。
曲は、Peter Reich が1973年に書いた回想録 "A Book Of Dreams" にインスパイアされてて、Peter の父親で精神科医・哲学者の Wilhelm Reich との、彼らの拠点 Orgonon でのエピソードに基づいてる。
MV もこれに沿ってる。
Bush pulls a copy of Peter Reich's A Book of Dreams from Sutherland's coat.
(Wikipedia「Cloudbusting」>「Music video」 )
1'50" 目 「PETER REICH A BOOK OF DREAMS」
Although the events depicted in the story took place in Maine, the newspaper clipping in the music video reads The Oregon Times, likely a reference to Reich's home and laboratory "Orgonon".
(同上 Wikipedia)
4'45" 目 「The Oregon Times」
Wikipedia「Wilhelm Reich」から、cloudbuster の図。
MV での cloudbuster のデザインは、Reich の本物とあまり似てなくて、私なぞは第1次世界大戦中期~第2次世界大戦初期の軍事用「空中聴音機」を思い出す。最後に出て来るまっすぐな筒は本物の cloudbuster 由来なふうで、周りのラッパ状のは「音に関する装置」みがある。