クラシックをロックで

Rick Wakeman "Lisztomania"(1975年)から 'Dante Period'。

プログレ聴き始めの頃、この曲でかっけえええってなった。クラシックっぽい和声とか曲構成とかを、ロックでやっつける。クラシックっぽい、って原曲がリストだから当たり前だけど。

当時の私がプログレに求めてたひとつが「クラシックをロックで」(カヴァーにしろ、それに類するオリジナルにしろ)だった。それはむしろプログレの行き方の一典型ではあるけど、なかでもこの曲は、畳み掛ける自在な転調、凝縮度、ガツンと来るハードさ、で私の欲求を満たした。

 

リストとかパガニーニとかは、その時代のロック・スター的存在だったから、こういう処理に向く。

こういう、クラシックを既成事実として「取り入れる」行き方でも、プログレ入門当時の私には、クリエイティヴなことに見えた。

 

同アルバムでは、あとこれとか:

これはヴァーグナー

 

2002年には "The Real Lisztomania" というタイトルでリイシュー盤が出てる。リマスタリング、新たな曲の追加、曲順の変更、があって、ぎゃくにオリジナル盤にあった2曲 'Rienzi / Chopsticks Fantasia' と 'Funerailles' がオミットされ、'Hibernation' は 'The Dream Of Hell' に改題されてる。

つべで聴いたところ、リマスタリングについては、定位とか音量バランスとかが大きく変わってる。就中 'Dante Period' でこれが顕著で、オリジナル盤では全く聴こえない音がいろいろ聴こえてくるし、最後はフェイド・アウトだし、本当に同じマスター・テープからのトラック・ダウンなの?と思うくらい(なんか散漫でガツンと来ない)。

 

"Lisztomania" は、Wakeman の4枚目のソロ・アルバムにして、ケン・ラッセル監督の同名の映画のサウンドトラックなわけだけど、映画は、つべでいくつかの断片を見る限り、荒唐無稽さとえげつなさがかなりツボ。

主演(リスト役)はロジャー・ドールトリー。

 

その後私は、クラシックを既成事実として取り入れる行き方をクリエイティヴと思えなくなる。Gentle Giant(というか Kerry Minnear)と出会ったせいだ。

 

追記

"Lisztomania" には、「リストのピアノ曲演奏」のパーソネルとして David Wilde がクレディットされてる。「愛の夢」とかは Wakeman ではなくこの人物が弾いてるのだろうか?