I.
私の中で Cape Cod と Cabot Cove が、混同されないまでも、かぶってる。
武満徹の、3曲からなる "Toward The Sea" の第3曲のタイトルでもある。
cod は「鱈」。「化学的酸素要求量」ではなく。
Cabot Cove はメイン州の田舎町。
実は私、今の今まで、これを実在する地名と思ってた。アメリカ CBS ネットワークで1984年から1996年まで放映されたドラマ・シリーズ "Murder, She Wrote" で、主人公 Jessica Fletcher の住まう町。但しロケは、メイン州ではなく、カリフォルニア州の Mendocino という町で行われたらしい。
このドラマは日本でも NHK で『まだ、素人』という邦題で放送された。嘘です。『ジェシカおばさんの事件簿』です。
で、どちらも、アメリカ東部に位置付けられる、頭文字が「CC」の地名、なので、一方を思い浮かべる時もう一方がくっついて思い浮かんでる。もう切り離せない。
武満 "Toward The Sea"(『海へ』)は3曲からなる。
1. 'The Night'(「夜」)
2. 'Moby-Dick'(「白鯨」)
3. 'Cape Cod'(「鱈岬」)
"Toward The Sea" には3つのヴァージョンがある。
①アルト・フルート、ギターの "Toward The Sea"(1981年初演)、
②アルト・フルート、ハープ、弦楽合奏の "Toward The Sea II"(1982年初演)、
③アルト・フルート、ハープの "Toward The Sea III"(1989年作曲)。
作曲の経緯。
まず、グリーンピースのクジラ保護キャンペーンの一環としての企画のために 'The Night' 作曲。
続けて残りの2曲を作曲するが、Moby-Dick は Moby-Dick だし、Cape Cod は19世紀に捕鯨基地として栄えた土地だし、けっきょく3曲ともクジラに関わってはいつつ、後の2曲はグリーンピース的「反捕鯨」のスタンスから離れてる。グリーンピースの自然保護の理念に共感しつつ、武満の自然観は偏狭な「反捕鯨」に収まるものではない、その自らの立場の表明になってる。武満は "Toward The Sea" を「万物を生み出す海への頌歌(ほめうた)」であると言ってる。
次に、土本典昭監督の映画『水俣の図・物語』のために、'The Night' をアルト・フルート、ハープ、弦楽合奏に編曲(この映画のためには他に 'A Way a Lone' を作曲)。
3曲揃った形としては、小泉浩のアルト・フルート、佐藤紀雄のギターで1981年に初演(第9回「Music Today 今日の音楽」最終日、武満特集のプログラム「水の風景」)。
1981年中には全3曲のアルト・フルート、ハープ、弦楽への編曲を終え、1982年に小泉浩、篠崎史子、岩城宏之/札幌交響楽団により初演(「武満徹世界初演曲 札幌特別演奏会」)。
アルト・フルート、ハープのヴァージョンは、篠崎史子の求めによるもの。
"Toward The Sea" 第3曲 'Cape Cod'
Patrick Gallois(アルト・フルート)、Göran Söllscher(ギター)
"Toward The Sea II" 第3曲 'Cape Cod'
Patrick Gallois(アルト・フルート)、Fabrice Pierre(ハープ)、
Sir Andrew Davis / BBC Symphony Orchestra
II.
「イタリア出身で、パリでキャリアの頂点を極めた、頭文字が『C』の人物」として、Cassini と Cherubini が、混同されないまでも、かぶってる。
Giovanni Domenico Cassini は、天文学者。私は、手許の広辞苑第4版第4刷(1994年)に「パリ天文台長」とあるので、これを鵜吞みにしてた。たしかに彼はパリ天文台が1671年に完成すると即、天文台内の住居に移ったが、ウィキペディア「パリ天文台」によると「開設されてから100年間は台長の職が設けられておらず、」初代台長は彼の孫、セザール=フランソワ・カッシーニである。
Luigi Cherubini は、作曲家で、パリ音楽院院長。
Cassini と混同することは無いが、Bellini と区別が付いてない。音楽史の「古典派」の最後のページに出て来る Cherubini と、イタリアの「ロマン派」の最初に出て来る Bellini、『メデア』と『ノルマ』は、どっちがどっちの作だっけ?
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