判明(か?)、「エオリアン・モード」。(James Tenney)

先日のこの記事で、「エオリアン・モード」という題名の曲を捜してる、と申しました。

なかで、「日本の現代音楽の作曲家の作」と書いた、この「日本の」というところが誤りだったことがほぼ確実です。すみません。

すなわち、James Tenney というアメリカの作曲家に 'Aeolian Mode' または 'In the Aeolian Mode' という題名の曲があるのが判ったのです。

この James Tenney 作品一覧*1の3ページ目「791」の「105」行目と振られてるところ。

In the Aeolian Mode (1973 / 1976) For prepared piano with any three or more of the following instruments: flute, clarinet, English horn, bassoon, vibraphone, marimba, chimes, harp, muted violin, muted viola

エオリアン・モードで(1973 / 1976)プリペアド・ピアノと、以下に挙げる楽器のうちの3つまたはそれ以上のための:フルート、クラリネットイングリッシュ・ホルンバスーンヴィブラフォンマリンバ、チャイム、ハープ、弱音器をつけたヴァイオリン、弱音器をつけたヴィオラ

 

James Tenney (1934 - 2006) は作曲家で音楽理論家。

「作曲をカール・ラッグルズ、ジョン・ケージ、ハリー・パーチ、エドガー・ヴァレーズ、周文中らに師事」

情報理論と作曲をリージャレン・ヒラーに師事し、確率論による初期のコンピューター音楽を作曲するが、その後はテープのディレイ効果や微分音・純正律を用いた器楽曲の創作に乗り換えた」

「テニーの作品は知覚や純正律、エルゴ理論(エルゴード性)を取り扱っており、その方法は単純なものから、手練手管を労したものまでさまざま」

「「変速(超速度)Meta (+) Hodos」は、ゲシュタルト理論や認知科学を応用した最初期の作品の一例であり、門人ラリー・ポランスキーの作風に先鞭をつけた」

ウィキペディア「ジェームズ・テニー」)

 

つべにたくさん上がってて、公式だけでも29あります。

 

今まで存在を知らなかった、というか子どもの頃に実際の音として1曲聴いててしかも印象に残っていながら、Tenney の名を今まで全く意識して来なかった、迂闊。

重要な作曲家なので、情報に接しなかったはずがない。逆バーダー・マインホフ現象。

 

作風が多種多様で、各曲が問題にしてるのが、モードだったり、音律だったり、もっと微細なことだったり、なんだけど、理論の純粋な応用の結果が作品である、という点で一貫してる、といえるのかな。

でもその結果物がどれもおそろしく「美しい」ということが、理論の選び方とその応用のしかたが音楽としての本来を外してないことを証してる、と思う。

 

となると、私はもともと「エオリアン・モード」の作曲者を捜してたのではあるけど、この1曲にこだわる理由はもはや無くなって、見つけてしまった James Tenney という一大鉱脈を掘らねばなりません。

じっさい「エオリアン・モード」は代表作ではないし、つべなどの音源も見つかりません。

 

知ったばかりでまだごく一部しか掘れてないけど、これとか、なるほど純正だ:

 

倍音列に沿ってるように聴こえるところは、この方法でグラフ化すると二次曲線っぽい並びが現れるんだな。4'08" 目とか:

 

そして、この曲が、作り方としては「エオリアン・モード」に近いのではないか? 拠ってるモード=響きは違いますが:

 

私が「エオリアン・モード」を日本の作曲家の作と思い込んでしまった理由。

放送された音源が、日本人の企画した演奏会で日本人演奏家によって演奏されたものの録音だった(らしい)から、です。すみません。

 

「(日本人の作曲者名) エオリアン・モード」で検索してもヒットしない(当然)ので、

そいえば編成にハープを含んでたな

とて、

「篠崎史子 エオリアン・モード」

で検索してみたところ、1975~6年の演奏の記録が、ざっと見たところ2つ、ヒットしたのでした。

その①。

このページ*2のずっと下の方、「・1975.01.28 ミュージック・メディア USA '75(アメリカン・センター)」のプログラムの3曲目。

▪️1975.01.28 ミュージック・メディア USA '75(アメリカン・センター)
 1.Yehuda Yannay / Houdini's Ninth
 2.Karl Korte / Remembrances
 3.James Tenney / Aeolian Mode
 4.George Wilson / Exigencies
 5.Charles Dodge / Speech Songs
 6.Frank Becker / Consensus
 7.Kenneth Gaburo / Video Composition
 8.George Crumb / Black Angels

 小泉浩:fl,高橋アキ/Frank Becker/樋口洋子:pf,山口保宣:perc,木村茉莉:hp,
 辰巳明子:vn,恵藤久美子:vn,竹内晴夫:va,苅田雅治:vc

(篠崎史子氏のお名前はこのページの別の箇所に出て来ます。)

'Aeolian Mode' が、ここに挙がった10人の演奏家のうちの誰と誰によるのかは絞り込めません。先述のように、プリペアド・ピアノ以外のパートについては楽器指定と人数がフレキシブルなので。

その②。

SOUND SPACE ARK の1976年4月28日東京文化会館小ホールでのコンサートの7曲中の7曲目。

ジェームズ・テニー(JAMES TENNEY)
    AEOLIAN MODE:1973(Cl. Fl. Hp. Perc. Pf.)

演奏:Fl.小泉浩 Hp.篠崎史子 Pf.高橋アキ Perc.山口保宜 Cl.鈴木良昭 

*1:追記 2022年06月16日

リンク切れた?

貼り直します:

https://www.researchgate.net/publication/240517039_James_Tenney_Works

*2:川崎弘二氏の御サイトなのですが、この「クロス・トーク」というページが何のための資料なのか、判りません。

このページに直にアクセスしてしまったために、このサイトのどのページのどのリンクからこのページに辿り着けるのかは判りません。

どうやら、コンサート(討論ないし講演を伴う?)のシリーズ企画の記録のようではあります。