「複数人でのインプロにおいて『場をどう組織するか』についての参加者から企画者への提案」的な何か。
なかで「作曲」といってるのはこういう、「インプロによるアンサンブルを成立させるための枠組み」というに近い。
案④
言うまでもなく MIDI キーボードの鍵盤には音階のとおりに音高を並べねばならないのではありません。ドラムキットの音色を呼び出せばひとつひとつのキーに各々ひとつひとつの楽器音がアサインされているように。これをアンサンブルに応用すること。
ハンドベルみたいな、ひとりがひとつのキーを受け持つアンサンブルにおいて、各人に、どういう音を出すかの自由を最大限与えること。譜面のひとつひとつのノートは、ただ誰の順番であるかを指示する、つまりドとアサインされた者は譜面上ドが巡ってくるたび、その音価分の長さ発音するが、その中で何をやってもかまわない。もちろん出す音高はドでなくてかまわない。
このアンサンブルで、アリモノ、例えばトロイメライの主メロを演奏したらどうなるか。
サンプラーのひとつひとつのキーに各々文脈を異にする音のイヴェントをアサインして、これをふつうのメロディ楽器用の演奏情報で発音させた状態に近い。自分の順番の度毎にやることがちがってもちろんかまわないが、各自やることを決めて人間サンプラーに徹するのもそれはそれで良い。
アンサンブルにおいて、誰が、いつ発音し、いつ発音しないか、を決めてゆく裏付けが欲しい。たぶん一番正しいのは、インプロ、つまりその場の空気に向かって感覚を研ぎ澄まして判断してゆくことでしょうが、これを「作曲」でやるにはどうするか。いっそその場にかかわる者の人為から完全に離れて、アリモノの譜面に神として振舞ってもらいたい衝動、案④は、見方を変えれば、こういうことにもなるでしょうか。
ここに来て興味をもち始めたのは、どういうシステムを持ち込むか、ということも大事ですがそれ以上に、それをどう運用するか、ということです。仕掛けを考える時、私はプレイヤーの良識を信じているあるいはこれに甘えているでしょう。私が、d の音しか使うな、と言う時、それ以外の音を使いたいプレイヤーは、キーボーディストなら、d の鍵盤に e の音をアサインして、これは楽音ではなく自然音なのでピッチは関係ないが鍵盤上 d だから d だ、と言い張ればよい。[企画者名]さんの「サインA*1」の場合、約束事を忠実に守りつつしかも曲を台無しにするのは簡単です。最初から「5」のサインを出す、とか。ある特定の人に向かって「1」を出し続けるとか。この場合、曲を中断して「それはなしだよ」というのでなしにシステム内で解決しようとするならば、彼がそういう良識の無いしかたでサインを出すのと同時に別のひとりがサインを出せばよい。「サインA」には、出されたサインを拒否するという選択肢は無いが、同時に2つ以上出されたら実際上どちらかひとつが選ばれる。この場合良識ないほうのサインは無視され彼はシステム内で孤立するでしょう。こういう事態を含めて、楽しめないか。
システムを作る側は思い切り厳密に作るが、演奏する側はこれを自分の都合のよいようにどこまで拡大解釈できるか躍起になって研究する、みたいのも、面白いと思うのですが。
*1:詳細不明。