暗譜

譜面は、書けるけど、読めない。

 

「私は譜面が苦手」と大括りに思ってた。でも腑分けすると、書くのは苦痛じゃない。ふだん書くプロセスを飛ばして直にキーボードに向かって打ち込むけど、書けないわけじゃない。必要に迫られれば譜面に起こす。

「書く」においては、実際に書く書かないにかかわらず、頭の中では譜面的発想にむしろ縛られている。

 

いっぽうで「読む」については、他人様の譜面を目の前にすると「取り付く島が無い」。

自分の言いたいことを書き表す力はあるが、他人の言ってることを読み解くのは苦手。

言いたいことは言うけど相手の言は聞かない、って端的にヤな奴じゃないか。

 

昔、あるバンドのピアノ・パートのオーディションで、すべて暗譜して行ったら、「偉い! このポイントは高いです!」とびっくりされた。

私は内心「いや、そうじゃないんです…ぜんぜん偉くないんです…」と戸惑いを持て余した。

私は「読みつつ弾く」ことが出来ないのだ。完全にさらって完全に身体に憶え込ませないと弾けないのだ。仕方なく暗譜して行っただけなのだ。

途中1か所つっかえて「譜面見てもいいんだぞw」と言われたけど、譜面が目の前にあろうが無かろうが、弾けないものは弾けないのだ。

 

憶えられたのは CD があったからで、譜面だけだったら無理。

(譜面と CD の食い違いを指摘するなどしたことも、もしかしたらポイントに結びついたかも知れない。) 

 

ちなみに、その時の課題曲4曲のうち、ふつうの和声で解釈できないし、繰り返しが無く、パターンに則ってではない展開のしかたをする、いわゆるアヴァンギャルドな曲3曲は憶えられるのに、残りの1曲、ロマン派風和声の、分散和音の模続進行的な曲は、どうしても憶えられなかった。