当ブログはロックがメインのくせに、ギターに殆ど触れない。奏者についても、楽器についても。
そもそも私にとって、音楽≒作曲、なので。
音色について。
エレキ・ギターは音色作りのパラメータが多いしヴァリュー設定が微妙だ。シンセに較べてコンディションに影響されやすい「生モノ」だしそこが面白い。
わたし的には、「レゾナンス」の効かせ方、ディストーションのどの周波数をどのくらいフィードバックさせるか、に興味がある(よく解ってませんが)。
「レゾナンス」で咄嗟に思い出すのはこの曲。もう、ハウる前提の設定。
ハウりそうなレゾナンスといっても、↑の Schnauser 曲のだらしなさと打って変わって↓の Stina Nordenstam 曲が引き締まった感じがするのは、音色設定だけでなく奏法(こまめにミュートするなどの)の違いが大きいのかな?
周囲にはフェンダー好きが多いけど、私が最初にギターの「音色」で「おっ!」となったのは「ハンバーガー・コンチェルト」のヤン・アッカーマン*1なので、以来レスポール派(手許にあるのは、実家から失敬してきた「グレコのストラト」ですが)。
響きについて。
アクースティック・ギター*2のソロ・ライヴを聴いて困ったことがある。
奏者は響きに陶酔して延々単純なアルペジオの連続を弾いてる。聴き手の私は取り残されて退屈してる。
奏者の聴く音と聴き手の聴く音が全くの別物なので。奏者は自分の出す音を耳元で聴いてるし、耳だけでなく、ギターのボディから身体に直接振動が伝わってる。豊かな響きの中にどっぷり浸って、微細な差異を聴き分けてる。ひとり自室でギターで遊ぶ時ありがちなやつ。それをステージ上でやられても。
聴き手の私は数メートル離れたところにいて、彼の体験してる出来事を共有できない。
(奏者と聴き手とで聴いてる音が一番違うのはたぶん、口琴。)
「ギタリズム」について。
ジム・ホールのことは、アメーバピグの音楽フロアで、にしさんという方から教わった。クリーントーンでやるのには理由があると思った。コンディミの多用を含む、記譜上の「音組織勝負」の人だからだ。ディストーションや、倍音の過剰は、不要だし却って邪魔だ。
一般に、12の音を平等に俯瞰できるキーボードに較べて、ギターは、音組織をそれ自体として考えるには制約がある。
その制約が却って発想を呼ぶこともある。但し、ギターで弾く限り面白い発想が、キーボードに移して弾くとつまらない、ということはままある。
ギターは演奏する楽しみ(どんな音程も無理なく作れるわけではない制約の中での工夫の楽しさとか、運指の図形的面白さとか)が大きい。ギターでの作曲においては、これと、音組織それ自体・コンポジションそれ自体としての面白さとが未分化で、キーボードはそれを峻別、前者を捨象してしまう。
ヒトはギターを抱えると馬鹿に見える。馬鹿に見えないロック・ギタリストは今堀恒雄だけだ。
といっても私の今堀への関心は、ここでもやはり、ギター演奏についてに先んじて、作曲について、なのだが。
(ちなみに今堀はストラトのイメージ。)
ここでいう「馬鹿」は悪口ではない。最高にかっこいい馬鹿。
平沢進の、ギタリストとしての矜持が、大好き。
最近とある記事で「フリップ卿」という呼称を見たが、「卿=lord」は領地名に付くのであって家名には付かない筈。
ググると、この呼称は日本で広く行われているらしい。
呼称といえば、一般名詞を個人が呼称として占有するって凄い。「画伯」といえば西脇一弘を、「教授」といえば坂本龍一を指す、の類。
私は、単位名か、船名で、名前を残したい。「テスラ」「しらせ」みたいに。
新海は、根性の単位。♩=180において、1拍の間に手弾きで4つの音符を奏するのに要する根性を1新海と定義する。
あと、船乗りになってロープを結びたい。これを夢見るようになったきっかけは、間違いなく、アレクサンドル・ステパノヴィチ・グリーン「深紅の帆」の登場人物、アーサー・グレイ。
「最近のギタリストはギターを低く構えてだらしない。田端義夫先生を見倣いなさい」は、どなたの漫談だっけ?
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*1:具体的には、スタジオヴァージョンの9分29秒目~。
この曲の1975年のライヴ映像を見ると、テイスとヤンが、アイコンタクトも無くそれぞれのパートを黙々とやってるというかさらにもう一歩積極的に「険悪」に見える。バンドとしては今にも空中分解しそう。
1973年頃のライヴではまだ、メンバーがお互いを信頼しきってる。テイスの自由闊達なプレイはヤンへの信頼の上に可能となる。'Hocus Pocus' の出音のインパクトは、バンド一丸なればこそ。
*2:「箱ギ」なる語を教わった。使ってゆきたい。
「アクースティック・ギター」=共鳴や増幅の仕組みに着目して「エレクトリック・ギター」に対応させる語
だとしたら、
「箱ギ」=形状・構造に着目して「ソリッド・ギター」に対応させる語
という感じがするので。