現実空間の中の音楽体験

(2015年12月23日、記)

 

 

なうで、ある方がこの曲をご教示下さった。

こども時代の、ある体験を思い出した。

戸越公園駅のプラットフォームで電車を待ってると、私の聴野の左方向、やや間遠く、大井町側の踏切警報機が鳴りだす。

数秒後、右方向、旗の台側の踏切警報機が、同じ音高で重なってきて、音空間がパッと広がる。

音高は同じだが、テンポが微妙に違ってて、モアレをやりだす。

電車が騒々しくフェイドインして来て、かそけき音の出来事は、掻き消されて終了する。

所用で戸越公園に出掛ける度、この出来事に耳を澄ますのを楽しみにするようになっていた。

 

ジャケ絵、落田洋子さんですね。

 

 

今の季節、町内会の方が火の用心の拍子木を打ちながら回って下さる。

私は自室にいてその音が届いてくるのを聴く。

2人(以上)で手分けして回ってるので、別々の方向、別々の距離から、相互に没交渉にそれぞれのテンポで鳴らされる拍子木の音が、届いてくる。

音源は空間の中を移動してるので、徐々に近づき、遠ざかる。1人がディミヌエンドし、入れ替わりにもう1人がクレシェンドして、ミックスのバランスが刻々変化する。

奏者ご本人はアンサンブルをやってる意識が無いが、私のいるこのポイントで、2つ(以上)の演奏が出会って、アンサンブルが生じる。

聴き手それぞれのポイントで、それぞれのアンサンブルが生じてる。

 

Eno "Another Green World" 所収 'In Dark Trees'。

私勝手に、ひょっとしてイーノは日本でこの拍子木のサウンドスケイプを体験して音楽を発想したんじゃないか?と想像してしまう。

実際のところは、"Musik Von Harmonia" からの影響が決定的、ということなんだろうけど。