(街中?大きな公園の中?での前段は憶えてない。そのロケーションの中で)執拗に差し出される何かのサンプルを受け取るのを拒否する。透明な袋に入った白く薄い、定型封筒大の物。若い眼鏡の営業魂逞しい男性薬剤師が薬局の窓口(透明なパネルで薬剤師と客が隔てられてパネルの下端に受け渡し口が開いてる)越しに。店のつくりが屋台というかプレハブというか、なので、私はうっかり、常時営業してるのか解体して移動するものなのかを質問しそうになるが、会話が成立したら相手の思う壺、と思いとどまる。薬剤師は食い下がり、効能を説明する。痔の薬で、土曜日の夜には万人が痔になるという前提で話す。漢方の薬効成分の名前がいろいろ出てくる。
彼が掛けてくれてるのか、SP 復刻のヴァイオリン曲が聴こえ、超絶技巧のカデンツァで最低音から最高音に跳躍する時、2つの音が一瞬重なる。私がこれは奏法的にあり得ないということを説明し出すと、薬剤師はさっきの拒絶の続きと勘違いして怒り出す。説明を、今度はこっちが食い下がって続けると、真意を理解した彼と私が傍らのもう1人に向かって説明するの図になる。「ヴァイオリンの4本の弦は平面じゃなく山形に並んでるので、いちばん下の G 線の音といちばん上の E 線の音とが同時に鳴る、ということは起こり得ない」
この録音物の関連の資料に、大学教授(男性、「大窪室越男」みたいな5文字の名前)が演奏家(女性)にあてた書簡があり、私はこれに記載のある放送局を、ドキュマン的情報を得るため、直接訪ねる。電話番号も書いてあるからまず電話でもよかったし、放送があったのは数年前なので、事情を判る関係者が今もいる可能性は低い。