Ⅰ.
変奏曲というとふつう、
主題、これがメロディの形を取るとして、これをいくつかの異なる文脈に置くことで、主題自体の形をなるべくそのままに、その意味を変えて見せる、ということだと思う。
この場合の主役は、主題ではなく、その処理方法のほうだ。そのための主題の設定のしかたが巧妙、ということもあるにせよ、主題が何であるかはわりとどうでもよくて、これをどう処理するかを見せるのが、変奏曲。
逆に、主題のほうを、曲を規定する原理と見做す変奏曲、もあり得るはず。
主題=メロディ=音高の時間的推移がこうである、ということが、曲のありよう、変奏のありようを決める、というもの。
(あるいはそれはふつうに「作曲一般」だろうか?)
カヴァー曲で、ワルツ曲のメロディをタンゴのアレンジに乗っける、みたいのは、身も蓋も無い。メロディ自体のもつ、曲を編んでゆく力を引っ張り出して変奏する=カヴァーする、という例があるか、知らない。
Ⅱ.
FM音源変奏曲。
主題=メロディ=音高の時間的推移を、「キャリア」として使うか「モデュレイタ」として使うか、によって、同一主題なのに出音が全く違うものになる、これを「変奏」と呼ぶ、というもの。
アナログ・シンセの LFO に主題を使うとか。
同じ主題ないし音列を、メロに使うか、コード進行に使うか、みたいのは、ふつうにあるのかな?
Ⅲ.
「主題なき変奏曲」は多分既に実例があるんだろう。「1つの主題とそのいくつかの変奏」じゃない、各部分がお互いに主題であり変奏であるような。
これを何故敢えて「変奏曲」と呼ぶかだけど、例えばヴェーベルンの Op. 27 は「変奏曲」というタイトルでありながら、そもそもどの箇所が主題なのかが議論になってたと思うけど、あの場合は「セリーが主題、曲がその変奏」といえるだろうか?