Gentle Giant 雑感

スタジオ録音のアルバムこそ正調で完全で、ライヴ・ヴァージョンはその再現の、完全とは限らない試み、と思いがちな私。

でも、書下ろし新曲であれば、スタジオ・ヴァージョンこそが、演奏も最もおずおずしてるし、作曲・アレンジも最も練れてない、ということになる。

ライヴで繰返し演奏するうちそれらが完成されてゆく。「勢い」の上限が更新されてゆく。

Gentle Giant "Free Hand" 所収 'Free Hand' は、ライヴ・ヴァージョンの評価が高いようだ。というか Chihiro S. 氏がこちらをより高く評価なさってた。

異存はない。より手の込んだ展開をするし、なにより、よりロックのノリになってる。ライヴでの演奏効果のために望ましい指向だ。

ただ私個人的には、じつは必ずしも GG に「ロックのノリ」を期待してない。スタジオ・ヴァージョンの、やたらスタティクな、作曲と、演奏。「音楽を奏でてる」というより「作業に徹してる」という佇まいに、私なぞは積極的に魅力を見出しもする。ライヴ・ヴァージョンではオミットされた楽想が惜しいし。

のちにアレンジを変更するくらいだから、バンド自身に、スタジオ・ヴァージョンはまだ(仮)という意識があったんだろうけど。

ライヴ・ヴァージョンでは、曲後半が大きく改変されてるんだけど、その後半に突入する時の、16分音符8つの主要モティーフを、単純なユニゾンで、単純に8回繰り返し、単純にクレシェンドするブリッジ

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が、GG らしからぬ滑稽に思えて、興醒めする。

 

ロックを期待しないとはつまり、GG の「アルバム2曲目枠」が好きということ。

Edge Of Twilight。Schooldays。Raconteur Troubadour。An Inmates Lullaby。So Sincere。

 

'So Sincere' こそ、"The Power And The Glory" ではむしろ影が薄くて、このライヴ

で、こんな緊迫度の高いスゴい曲だったのか 、と驚く。

 

ブートレグで、パート間の音量バランスが悪いことは、ふつうマイナス評価の対象なんだろう。

GG の、作曲上どのパートも価値の重さに優劣が無く、これらが複雑に入り組んでる「全パートがウワモノ」の音楽では、各パートの動きを分離して聴き取ることが、他のバンドよりも重要になる。

なので、GG の場合、「音量バランスの悪さ」は、スタジオ・ヴァージョンではマスキングされてたパートの動きを聴き取るために、歓迎される。

 

最初に聴いた GG は、ライヴ盤 "Playing The Fool" だった。

'On Reflection'(この曲もスタジオとライヴとでアレンジが大きく違う)の、入り組んだ器楽アンサンブル上の入り組んだ声楽アンサンブルは、演奏不可能、あとでスタジオで重ねてるに決まってる、と思った。

のちにブートを聴いて、本当に一発で演奏してて、腰を抜かした。 

映像としては、'On Reflection' のライヴは1978年1月収録のものが知られてる。アルバムでいうと "The Missing Piece" のあとの時期。この曲のライヴ映像は無条件で貴重だけど、1975~6年頃の映像は残ってないのかな?とも思う。