「温新知故」というタイトルで The Watch を貼ろうと思ったけどやめた。
A Trick Of The Tail ツアーのセトリに 'White Mountain' が組み込まれたのは、どういう事情だろう?
テクニック的に平易で、曲構成が単純なので脳みそも疲れない、これをやりつつ体力知力を回復できるうえに、ウケる、からだろうか?
これがウケるのは、1970年に "Trespass" に収録されて世に出て以来、ゲイブリエル在籍中たぶん1度もライヴでやられてない曲だからだし、その間にメンバーが大きく入れ替ってる、このメンツでこれをやるとどうなるか?の興味があるから。
"Trespass" でのメンバーは、
Tony Banks
Mike Rutherford
Anthony Phillips
John Mayhew
1976年ツアー時は、
Tony Banks
Mike Rutherford
Steve Hackett
アレンジがかなり違う。
間奏が短くなってるのは、ゲイブリエルのフルートソロを入れる必要が無いから。もともと「A、A'」だったので、「A」を端折って「1回言って済ませる」のは正解と聴こえる。オリジナルは間奏らしい間奏だったけど、こっちは、間奏というよりブリッジ的。
ドラムは、オリジナルではロックのビートだけど、ブルーフォードはドラムというよりパーカスで、別の日の演奏を聴くとかなり違うことやってるので、即興の要素が大きいみたい。
このツアーのメンツで "Trespass" の曲をやるって、The Watch が Genesis をやる、くらいの、つまり「カヴァー」といっていい。
ところで歌詞に trespass(ed) の語が出るのは、"Trespass" 通じて、この曲だけなのかな? 把握してないけど。
さいきん友人と、絵や曲を「そのまま見る、聴く」ってどういうことだろう?みたいな話になった。
もし、'White Mountain' 1976年ライヴ ver. を、オリジナル ver. の予備知識なしに、まっさらの耳で聴いたら、どう聴こえるのか?それを私は、想像してみることしか出来ない。
これは、私にとって「そのまま聴く」のが困難な曲*1だ。
素直に綺麗な曲だし、ぴったりしっくり来て、大切な音楽になりそうな気もする。
曲との「出会い方」というと、思い出すエピソードがある。どこで読んだ話だったか。
初めて鉱石ラジオを自作して、最初に受信した音楽を、感動を以て聴く。ベートーヴェンの交響曲だった。好きな曲になった。
そのあとカラヤンが来日して、地元でその交響曲をやるという。もちろん聴きに行く。全然つまらなくてがっかりする。
カラヤンの公演は、ベートーヴェン演奏として、もちろん最高水準のものだったに違いない。でもその人にとってのベートーヴェンって、これじゃない。
その人は何に感動したのか。
自作ラジオから初めて聴こえてきた音楽だから、好きにならないわけがない。
あと、そういう条件を抜きに、物理的即物的にも、そのラジオの個別特殊の鳴り方が美しい、ということがある。ベートーヴェンの書いたことを正しく理解するための「ハイファイ」ではないけど、そのラジオの鳴り方の特性(オーディオ的視点でマイナス要素とされること含めて)に美を見出すことは、これも大事な「音楽的」体験だ。
*1:オリジナルを前提としないので、「ver.」ではなく「曲」。