完全に個人的な思い出話で済みません。
富士山の映像にクラシック音楽を当てたものでした。清冽な渓流の映像に差し掛かると、清冽なオーケストレイションに導かれて、清冽なメゾ・ソプラノが歌い出しました。
その声に私は聞き憶えがありました。驚懼の中にも、私は咄嗟に思いあたって、叫びました。「その声は、フレデリカ・フォン・シュターデではないか?」
シュターデのことはその時点で、『ペレメリ』カラヤン盤のメリザンドと、小澤/ボストン交響楽団とのラヴェル歌曲集で知っていました。
曲は、初めて聴くものでした。シュターデのディスコグラフィにはカントルーブ『オーヴェルニュの歌』があるので、それにちがいない、と目星を付けましたが、確かめる手立てがありません。
のちに YouTube の存在を知り、見つけました:
カントルーブが音楽史的にどの程度重要か判りませんが、こういう経緯があったので、この「バイレロ」はわたし的に親密な曲です。
渓流の映像には「バイカモ」が映っていましたが、「バイレロ」との連想による後付けの記憶かも知れません。
この曲にはマドレーヌ・グレイ、キリ・テ・カナワ、ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレスなど多くの録音がありますが、シュターデの「いっちゃってる感」は、唯一無二です。