Yes "Tales From Topographic Oceans" の大事な特徴のひとつは「モティーフ音形がいくつか設定されて、それぞれ4曲をまたいで繰返し現れること」なので、「"Topographic Oceans" モティーフ一覧」を作ってる人がいるに違いないのだが、検索で咄嗟に見つからない。
「モティーフの使い回し」といっても、例えば2オクターヴ下で4分の1のスピードで=4倍の長さに引き延ばしてそれをやられても、ヒトの感覚はそれをメロディとして認識できない。気付くためには「聴く」だけでなく「分析する」作業が必要になる。
あるいは例えば、c - d - e - f の4拍の長さのメロの音名をコードネームに読み替えて C - Dm - Em - F という4小節のコード進行に変奏する、とか。
以下は、全てのモティーフを網羅する「一覧」でもないし、「分析」の必要な領域にまで踏み込んでもいない。ふつうに鑑賞するうち気付いた範囲で。
ひとまず文章メインで書き連ねました。非常に判りづらいです。すみません。ほんとうに、どなたか、譜例やつべ、表や関連図を駆使して、判りやすい一覧を作って下さらないかなあ。
① 第1曲 5'02" 目~の歌メロが、第2曲 2'00" 目~のオルガンと 6'08" 目~のヴォーカル、第3曲 8'39" 目~のスティールギターに再現するほか、第3曲 4'39" 目~*1、第4曲 5'24" 目~=この曲の核心 'Nous sommes du soleil.' もこれに基づくと見做せる。
第2曲 6'08"目~ではヴォーカルにシンクロしてギターが「ドシドラ、ソ、」とハモるが、第4曲 5'24" 目~ではこのギターの音形が先行し、ヴォーカルと交互の掛け合いになる。
第3曲のガットギターの 12'52" 目~、12'59" 目~
もこれだろうか?
② 第3曲 0'45" 目~のスティールギターのメロが、第4曲 13'11" 目~のブリッジ的音形と 16'09" 目~のドラム(タム)に再現する。
ことによると第2曲 0'37" 目~の歌メロも関係がある。
③ 第2曲 1'33" 目~の歌メロ冒頭3音の下行が器楽的に畳み掛けられて 4'21" 目~のブリッジ的箇所が作られ、第4曲 0'18" 目~のギターに華々しく再現する。
第3曲 6'13" 目~のギターとメロトロン(ソロ弦の音色)の6度ハモりの冒頭3音の上行は、この第2曲 1'33" 目~を反行させたものだろうか?*2
④ 以前この記事
shinkai6501.hatenablog.com
で指摘した、第1曲 0'36" 目~のギターの音形
は、第1曲を通して繰り返し出るほか、第4曲 8'29" 目~に登場するわけだけど、第2曲 0'00" 目~(、 10'34" 目~、13'05" 目~)のオルガンもこれの変奏なのではないか。
第4曲、4分目からの1分20秒間ほど、ギターが前3曲を回想してフレーズのメドレーをやる。これもアリだけど、モティーフ処理による「構築性」とは別物。身も蓋もない。「リプライズの感動」は、オーラスのギターソロ中 20'30" 目に第1曲の 3'54" 目~が 1小節半 現れること、に一任すべきだったのでは?
ついでに、各所で 'Close To The Edge'、'Siberian Khatru'、'Heart Of The Sunrise' の断片がよぎる*3。
以上は4曲をまたいで現れるモティーフについて。この他に、もちろんふつうに、各曲それぞれの中だけのモティーフがある。
第3曲 'The Ancient (Giants Under The Sun)' のモティーフ処理には謎がある。
この曲固有のモティーフはたぶん4つを指摘できるが、その1つ目、10'02" 目~、12'01" 目~にセミアコで奏されるやつは、12'28" 目~にガットギターとヴォーカルで再現する。それまでの原始的なビートとフリーキーなスティールギター+セミアコが一転、古楽ないしトラッド風の瀟洒なガットギター伴奏の重唱になる箇所は、アレンジの突然の変化にもびっくりするが、さらにびっくりするのは、その歌い出しのメロが、その直前にセミアコがやってたまんまの形なことだ。
近すぎる*4。
初めからのプランなのか、それとも部分の継ぎ接ぎで1曲の形にする時に隣り合ったのか。後者なら、ガットギターの方が先にあって、セミアコソロに盛り込んだ、という順序なのかな?
2つ目のモティーフ、2'09" 目~に前半部分が、2'51" 目~に全体が、スティールギターで奏されるやつは、曲終わり、17'43" 目~に再び現れる。その再現自体は素直だが、その時シンセが付ける対旋律に異物感がある。音程的にぶつかってる。別なモティーフを、ハモりを度外視して、機械的に併置した、という佇まい。初め2小節
は、上記②の一部分とおぼしいが、それ以上のことは私には判らない*5*6。
この曲のスティールギターソロでは、とくに 10'09" 目~ 10'59" 目がフリーキーなのだが、その中に上記②③の不完全な形が聴き取れる。Giant がベロンベロンに酔って、モティーフ演奏を完遂できない風情。
もしかしたら、「4」がこのアルバムの基本になる数で、「4」曲、各曲のモティーフが「4」つずつ、全曲をまたぐモティーフが「4」つ、とかあるのだろうか?そこまで検証してないけど。
なお、yesofficial がつべにあげてる4曲はそれぞれ2種類ずつあって、第1曲の2種類のうち、こっち
は、イントロが、もう1種類の (2003 Remaster) としてあがってるやつよりも20秒ほど短い。上記のデュレイションは (2003 Remaster) による。
にしても "Topographic Oceans" と "Relayer" への世評の芳しくないことに驚く。
*1:6'39" 目~に再び現れる時は 6/8 拍子なので疾走感がある。
*2:第2曲 10'18" 目~(、12'49" 目~)は、下行上行両方を含むし、同じ形が第1曲 14'31" 目~に(完全4度上げて)出てくる=曲をまたぐモティーフとして意識されてるから、これを大元と見るべきかな?
*3:あと、第2曲 10'41" 目~の歌メロは、これ
の冒頭アンダソンが口ずさむメロが元になってるのではないか?音形が似てるし、キーが同じだ。
ウェイクマンのセッティングの間を繋いでるんだろう。
ちなみに、このフィルム作品 "Yessongs" でのウェイクマン・ソロ・コーナーは、アルバム "Yessongs" のとは別の日の収録。アルバムでも同じ箇所でアンダソンの鼻歌が入るが、件の音形を確認できるのはフィルム作品の方だけ。
それぞれ別メロということは、即興ではあるんだろう。
*4:この「近さ」を私が奇異に感じる理由は曰く言い難い。すみません。
*5:追記 2022年02月03日
この点についてはその後、1記事設けてさらに考察を深めました:
*6:4つあるうちの3つ目のモティーフについては、話が煩雑になる。
1'17" 目~に出て来て、7'02" 目に再登場するやつなんだけど、5'58" 目~もこれの変形と見做せると思う。
いっぽう、6'22" 目~はギターとメロトロンのオクターヴユニゾンだが、これが 7'38" 目に再び現れる時には、ユニゾンではなく、メロトロンは 6'22" 目と同形、ギターはそれへの対旋律になってる。
で、この対旋律が、5'58" 目~を4分音符のテヌートスタカートに押し込めたもの。
4つ目のモティーフは、もちろん、冒頭 0'03" 目~にシンバルで「シャンシャン、、シャンシャン、シャンシャン」と提示され、3'41"目以降ベースが「ズンガッ、、ズンガッ、ズンガッ」とやるやつ。この曲の印象といえばまずこのモティーフ。