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音楽で泣いた①

音楽 プログレ

(2015年11月02日、記)

 

 

www.youtube.com

Genesis 'Watcher Of The Skies'、2008年リマスター。

 

 

オーディオのことは皆目判らない。

曲の正しい理解のための再生環境というのはあるはずで、もっとこだわるべきだと反省する。

CDのエディションへの=音質の差異へのこだわりも無くて、リマスターで買い直すということはほぼしないのだが、2008年にジェネシスの過去作がどっとリマスターされた時、"Foxtrot" だけはどうしても買いたかった。高かったけど。

ということは、従来のこのアルバムのミックスに疑問があったということだ。

 

 

まずこの曲自体のことと、私個人のこの曲との馴れ初めについて。

 

だが、この曲については、今さら何を言ってもしょうがない。

この曲の特徴はまずもちろんなんといっても、リフ。

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ベース+ギターが、トニックを、6拍の長さを16個の16分音符と8個の16分休符で、強迫神経症的に執拗に刻むリフが、曲のほとんど最初から最後までを貫徹する。

初めて聴いた時、こんなのアリかよ、と思いつつ、絶大な効果に、捻じ伏せられた。

 

但しこういうものは、思い付きの目覚ましさなので、フォロワーがこれを形だけ模倣しても通らない。

この曲をもってこのバンドの「代表作」とすることはできまい。

このバンド本来の、目くるめく変幻自在の、幅広く大胆で、細部が繊細な和声からすると、この曲は、「単純」と「勢い」で、一面性を敢えて辞さずやっつけた「潔さ」の勝利であって、つまり「ベト7」的位置だ。

 

その一面性を、イントロの、メロトロンのみというもう一つの一面性が、補ってる、とも見える。

こちらには和声の、幅広さと、付加音の微妙さがあるし、まだメロトロンが新鮮だった小6の私は、その音色と、怪奇な和声を堪能した。そしてすぐに飽きた。

暗く怪奇なイントロから、長いクレッシェンドを経て、輝かしく高らかな曲本体が立ち上がる効果は、確かに絶大なのだし。

 

 

現代の耳で1970年代の曲を聴く時、アレンジがスカスカに聴こえて困ることがある。

この曲所収のアルバム "Foxtrot" も最初そういう印象だった。

 

数年前、ディスクユニオンジェネシスのオーディエンス録音ブートレグCD-Rを10枚ほど買った中に、"Coastliners" というのがあって、タイトル通りFoxtrotツアーとおぼしきプログラム中に 'Can-Utility And The Coastliners' が入ってた。

この曲が好きで、ライヴはたぶん珍しいし、よく聴いてた。

よく聴いてたがために、他の9枚ほどと分けて置いてたらしく、棚のコーナーから消えてて、今泣いてる。

昼の部、夜の部収録してて、つまり各曲およそ2回ずつ聴ける。

当然 'Watcher' も入ってる。

昼の部では音が間近で、インパクトがあるが、'Watcher' は曲後半しか入ってない。

夜の部では全曲聴けるが、音像が遠すぎる。

とにかくこの昼の部 'Watcher' を聴いて、今まで聴いてたスタジオ盤は、この曲を正しく再現していないのでは?との疑問が湧いた。

フィル・コリンズのドラムの、手数が多くてビートが細かくて、流麗で繊細で、音色豊かな「フレーズ」を捉えていない。

スネアの音色がフィル・コリンズじゃない。

たしかに "Foxtrot" のミックスはやけに分離が悪い。

アレンジスカスカ感はミックスのせいで細部がつぶれてるからじゃないのか。

 

2008年リマスターが解決してくれました。

この曲が、この世で初めて、正しく鳴るのを聴いて、泣きました。

 

 

3分45秒目からのブリッジ的箇所が大好きで、件のリフが、6拍の長さを24等分する上に、ハモンドが、パッと聴き18等分で、行進曲風な単純さで乗っかってるのが、たんにポリリズムなのか、ものすごく緻密に噛み合ってるのか、どっちだろう?と不思議だった。というか今も不思議だ。

ここのリズムのアレンジが、"Selling England" ツアーの時期までには、変更されてて、より複雑なシンコペーションに「進化」してるが、カウント可能なレヴェルに落とし込んだとも言えて、前述の妙味は失われてる。

 

私の知るこの曲のいちばん古い演奏は、1972年8月11日、レディング・フェスティヴァル出演時のもの。

"Foxtrot" リリースの10月6日に先立って、新曲として披露されてる。

この曲のサビのアレンジは2パターンある。

①(スタジオヴァージョンのタイムで)2分19秒~の形では、バックコーラスが、メインヴォーカルとユニゾン

②3分57秒~の形では、3声でハモる(件のリフは途切れ、低音とバスドラムが4分音符で刻む)

ところが、レディングヴァージョンでは、コーラスの付け方が毎回同じで、下1声を確認できるが、間が抜けてるというか呑気というか、私などはカーター・ファミリーを連想してしまって、カントリー臭くて、この曲の高邁さと相容れない。

アップされてました。21分55秒目。

www.youtube.com

この動画を探すために「Reading Genesis」で検索するとちょっと大変なことになります。

 

追記

その後つべで見つけた、'Watcher Of The Skies' と 'Can-Utility And The Coastliners' の、"Foxtrot" リリース以前の演奏。

shinkai6501.hatenablog.com