Propaganda 'The Chase'

シンフォの一部類で、というかシンフォというと狭義にはまずそれのことかも知れないんだけど、工夫の無いリズムパターンと工夫の無い和声が延々続く、というスタイルのものがある。

聴き方が判らない。判りたくない。めぐり逢う青春を。

世の中にはどうやら、質感をひとつ作って持続させてある中に「浸る」という聴き方の音楽があるようだ。

Roxy Music はわたし的にいまだに聴き方の判らない音楽で、ピンと来るのは目下 Eno だけだけど、ことに "Avalon" などは「浸って聴く」もので、「質感を心地良く思えるかどうか」イコール「判るか判らないか」なんだろう。

「シンフォ」とは聴く姿勢を指す言葉であり、これに応えるための仕様を持つスタイルのことなので、 "Avalon" もここに分類される。

 

私は Propaganda のことを全然知らない。

'Dream Within A Dream' が、リフ主体、白玉コード、質感重視、の印象だった。私の苦手な要素が揃ってるようにも思えた。

1980年代に馴染みの無い者にとっては厳しいのかなと。

でも、ZTT の硬質な質感のいっぽうで、歌詞に E. A. Poe を使うという耽美、ライヴ映像を見るとけっこうロックしてたりもして、一筋縄でいかない。

そしてこの曲を知る:

「浸るべき質感」が表に立つ箇所もあるけど、むしろ、造形のインパクトに驚く。曲開始出合頭に増4度から始まる和声。ティンパニまで持ち出すアレンジ。

1'00" 目~は「More Cowbell」状態だけど*1

 

The Art Of Noise ほどコンセプト剥き出しではないにせよ、Propaganda も、1980年代当時にあっては最先端の音だったんだろう。

サンプリングとかの最先端技術の音楽での使い方が ZTT によって開拓された、というとき、ZTT の独創性なればこそなのか、それとも、どのみちそうなる必然のたまたま最初の例が ZTT だったのか、私には判断出来ない。

技術を使ったのか、技術に使われたのか。

ZTT というレーベル名はマリネッティに、The Art Of Noise というバンド名はルッソロに由来するらしい。

 

補足:

*1:追記 2023年12月27日 ああでも 2'03" 目~は弱奏がきれい。名カウベル奏者だな。