長い物が苦手だ。映画を全く不勉強なのも、長いから、というのが最大の理由。
その私が、今朝、ケント・ナガノのメシアン『アッシジの聖フランチェスコ』を聴き通した(昨日の記事の段階ではまだ一部しか聴いてなかった)。
4時間の音楽をぶっ続けで聴いたのは初めてな気がする。ドビュッシー『ペレメリ』(3時間)ですら、1時間ずつ3回に分けて、みたいな聴き方しかしてない。
集中力を持続して聴き通せたのは、4時間のあいだの全ての瞬間が美しいから。音形の造形と、構成と、オーケストレイションが、とにかく面白くて、退屈する暇がない。
そのうちの1か所だけ、10分間、貼る。私の好みで貼ってしまいます。静かで、オーケストレイションに魂持ってかれる箇所。Dawn Upshaw(ソプラノ、天使)と Arnold Schoenberg Choir は出て来ない箇所だけど。
John Aler(テノール、兄弟たちのうちの一人)、José van Dam(バス、聖フランチェスコ)、Kent Nagano 指揮 Hallé Orchestra。
「『魂持ってかれる』要素というのは Nagano に不足するところ」と思ってた。ところが今回この演奏の「作品への誠実、硬質な透明」こそが最も遥かに陶然とさせる、と納得させられた。
Nagano についてわたし的には他に、ブゾーニ『アルレッキーノ』全曲盤を入れてくれたのが有難かった。
ヴァーグナー『指環』は実家にエア・チェックのカセット・テープがあったけど、何度かトライして、その都度『ラインの黄金』の冒頭45分間で挫折した。バイロイト実況の、いつの年のものか、Boulez 指揮で、Gwyneth Jones がブリュンヒルデのやつ。
実家には他に、Solti の全曲盤からのハイライト盤 LP があった。1枚、1時間。たしかにこれだけでヴァーグナーを聴いた気にはなれなかった。
今、長い物への耐性が出来つつある。Lou Reed "Metal Machine Music" も楽しく聴き通したし。
もともと、興味の対象が多過ぎて、何かひとつの事に取り掛かりつつ別のことに気持ちが移ってる、みたいなことが、腰を落ち着けて長い物に取り組むことを困難にしてたと思う。
歳を取って、余計な欲が無くなった。『アッシジの聖フランチェスコ』を聴きながら、ここを死に場所に出来るなら本望、と思ってた。