Astronomy Domine とピンク・フロイド雑感

『狂気』はその「好き勝手」が本当にショックだったけど、ほどなく、ピンク・フロイドは「作曲」として見ると弱いし退屈、「エコーズ」という奇跡の1曲を除いては、と気付き始めた。

ある時、隣室からライヴ盤 LP とおぼしき音が漏れて来た。「超越的コード進行」と「モニュメンタルに屹立するパートとファルフィサ・オルガンの単音が彼方へと引き込むパートが交替する構成」がかっこいい曲。

ピンク・フロイドにもこのくらいの作曲力があるといいのに…」

と聴き入りつつ、プログレ欲を満たされてた。

ところが、続いて「ユージン、斧に気をつけろ」へと進んだ。このピンク・フロイド・ナンバーは既に知ってた。

「えっ? このレコード、ピンク・フロイドなの?! さっきのかっこいい曲もピンク・フロイド?!?!」

『ウマグマ』のサイドAなのでした。件のかっこいい曲は「天の支配 Astronomy Domine」。

調べると 1st. アルバム『夜明けの口笛吹き』収録曲だった。初めて聴くバレット曲は、『ウマグマ』収録のライヴ・ヴァージョンなのだった。

ほどなくして聴いた 1st. のスタジオ・ヴァージョンについては当時、個々のパートが即物的でオンな音像で分離したミックスが、音場(そこに浸りきるための)を作ってないと感じたし、曲構成もよりシンプルでコンパクトなので、『ウマグマ』ヴァージョンのイメージ=当時の私がプログレに求めるイメージと食い違って、いまいち納得しなかった。ギターの、攻撃的な音色と粗削りなフレーズは、プログレというより NY パンクみたいだと思った。当時の話です。

 

ピンク・フロイドをまだるっこく感じるのは、作曲の退屈と、それ以前にまさに「テンポの速い曲が無いこと」が理由だ。速い曲は当座 'On The Run' しか思い付かない。

 

「片面1曲にならなかった大作」といえば、『アニマルズ』の「ドッグ」がそうだし、『炎~あなたがここにいてほしい』の「狂ったダイアモンド」もトータルで25分あるけど「片面」曲ではない。

『炎』の人気の高いのに驚く。私はどうしても解らない。『アニマルズ』には(退屈でありつつ)聴くべき内容があると思う。逆張りでいうのではない。

ふと思うのは、リチャード・ライトの評。彼は『炎』については「私自身の趣味で聴ける唯一の作品」といってたのをどこかで読んだ記憶がある。『アニマルズ』についてはその「攻撃的サウンド」をあまり評価してないようだ。

私はライトと相性が悪いのだろうか?

ライト曲といえば「シーソー」(『神秘』所収)が気になる。好きだし造形として優れてると思うけど、ここまで音像が曖昧模糊として、ここまで堕落しきって曲調が軟弱なロック・ナンバーが他にあるか、ときどき思い巡らすのだけど、思い当たらない。