譫妄 2/2

幻覚と幻聴、その、描写と、「視てる/聴いてる私の側がコントロール出来る要素がある」ことについて。

 

前回は幻聴についてだった。今回は幻覚について。

 

幻覚

① 描写

部屋の壁や天井一面を埋め尽くすのは、場合によって、いろんな様式の地図や、明朝体やゴチックの文字や、唐草模様や、版画風イラスト、マンガのコマ割り、など。

くっきりとシャープな像で。私は近視なので、もし本当に壁や天井の距離に書かれてるのなら、こんなにくっきり見える筈がない。

絵をお描きになる方、動画をお作りになる方なら、再現することも出来るのだけど。私は言葉で説明することしかできないので、伝わりにくいし、冗長になってしまう。でもメモっておく。

①-a 地図

いくつかのパターンがある。

ⅰ.道路やエリアの縁取りがシャープな実線で表現される。道路は無色=白、それ以外のエリアは赤みがかった中間色、海は青みがかった中間色。海岸線が微細に入り組む。

つねに動いている。道路は伸びてゆき、あらゆる線の向きや長さがつねに更新される。

ⅱ.市街地。縁取りの無い赤みがかった中間色の道路、水色が川、黄緑の緑地がしだいにエリアを広げてゆき、それぞれの線の角度や長さはつねに揺らいでいる。

市街地は、小さなブロックから始まり、拡張してゆく。

ⅲ.町の境界線だけが朱色のシャープな線で表現される。横に長い長方形に丸みを帯びさせた形の町が多い。境界線(区切り方)がつねに更新されつつ、町の数が増殖して拡がってゆく。町の形の中にカタカナで町名が書き込まれたり、特定の町が斜線で埋められたりする。

ⅳ.絵地図、古地図風。

①-b 文字

ⅰ.ムック本の目次ページみたいな、淡い青地に濃い青のゴチックで、バンド名みたいなカタカナの横書きが縦に並ぶ。チカチカと点滅してレイアウトと文字自体が変わり続ける。カタカナ以外の読めない符号も含む。

ⅱ.大き目の明朝体。本の表紙みたいな。「新海智子」を含む。

ⅲ.ⅱ.のヴァリエーションで、立体造形作品。蝋細工のような塊と、緑色のプラスチックの部品(明朝体の漢字の縦線=太線が、場合によってプラ部品に見える)を組み合わせた立体作品に、白地に白で「新海智子」の明朝体が彫られる。文字部分が凸。

①-c 模様

ⅰ.目を閉じて見える、コマ割りされた中に、版画風シルエット。木立のような唐草模様のような。人物も含む。

ⅱ.ⅰ.は、目を開けると、初山滋風切り絵もしくは影絵風の、蟻頭の妖精が縦横に連なって唐草パターンになってる絵になる。初め黒一色、目を凝らすと薄い青と薄い赤の透明な部分がチカチカと点滅し、妖精の羽が羽ばたくように見える。

ⅲ.版画風北欧風テキスタイル

ⅳ.マンガのコマ割り。水彩的中間色。

ⅴ.街並(地図ではなく、鳥瞰)がスクロールしてゆく中を、キャラクター(人物ではなく、文様)が左から右に進んで行く。地名などの文字(マンガの中の説明的な文字みたいな)を含む。全体がスクロールして視点が移ってゆく時、キャラクターや風景の各部分どうしの位置関係が微妙にずれたりする。それぞれが切り抜いたパーツのように自律的身じろぎをしており、「1枚の風景が統一的図法で動いてゆく」のではない。

ⅵ.木立の向こうに水辺の風景。

①-d

頭上の梁から下がった2mくらいの白い紐が、50cmくらいの振幅、2往復/秒くらいの周期で左右に振れる。

これは、場合によって、滑らかな岩肌を流れる滝が光を受けて煌めくところだったり、私がその水流をかぶる形だったり(濡れないけど)、頭上にぶら下げられた差し渡し1mの巨大なフライドチキンだったりする。

 

これらには、私の側がコントロール出来る要素があることに気付く。

①-c ⅰ.「コマ割りされた中に、版画風シルエット」では、特定のポイントを凝視することで、そこを暗い色にして向こう側への見通しを遮ったり、透明にして向こう側の明るさを見たり出来る。

①-c ⅵ.「木立の向こうに水辺の風景」では、見下ろすアングルの風景が、ヘリ or ドローンからの空撮になり、風景の中をゆっくり進み始めたのだが、この時、進む方向やどっちのアングルを見るかを私自身が意識的に決められることに気付いた。人影は無かったのだが、ある時アングルを下に振ると、海辺に向かって坂を下りてゆく大勢の観光客の後ろ姿があって驚いた。その高さにまで降りて人と人の間をすり抜けたりしたが、誰かとやりとりすることは無かった。視点移動に伴う風景各パーツの動きはここでも、相互の位置関係が微妙にずれたりする。電柱なのか遮断器なのか、突き出たものが、一瞬ぴょこんとお辞儀をして戻る、などの各パーツの身じろぎ。

 

幻覚は数日目に消えた。幻聴はその後も長く続いた。