Crass 'Reality Asylum'

プログレという様式」と同様の矛盾に「オルタナというジャンル」がある。

無所属の会」的な。

むろんこの種の矛盾は表現一般に付き纏う。そもそも「ロック」は精神の自由がその本質だった筈で、内側からスタイルの固定と自己模倣が始まり、外側からコマーシャリズムに乗っ取られ消費されるたび、本質に立ち返るため「ロック」にことさらに刷新の形容詞が付される羽目になる。

プログレッシヴ・ロック」「オルタナティヴ・ロック」は「自由・自由」のトートロジーだ。

 

語本来の意味からして、「オルタナ」は特定のジャンル、特定のスタイルを指さないし、この語から思い浮かべるバンドが各人各様なのは当然だ。

この語が使われ始めたのはたぶん1978年で、プログレが終わり、パンクが瞬間の爆発ののち1ジャンルとして形骸化してた。

表現自体の自由と、資本の自由(インディペンデント・レーベル)。たぶんスロッビング・グリッスルとかラフ・トレードとかラルフ・レコードとかを、漠然と、指してた。 

その時点での意味の「オルタナ」の極北は、これだ。

Crass 'Reality Asylum'。1979年のシングル。このつべの画像はコンピ "Best Before... 1984"(1986年)のジャケ。

シングルのジャケ:

6つ折りで、広げると:

その裏:

コラージュの中にジョン・エヴァレット・ミレイ「両親の家のキリスト」からの引用が。

 

どうも私は「ロック」という言葉を褒め言葉として使う時と貶し言葉として使う時とがある。

批評精神として「生きてる」という意味で使う時と、スタイルの形骸として「死んでる」という意味で使う時と。