ヨウヒッコ

フィンランド*1の楽器、ヨウヒッコ(jouhikko)。

ドローン弦が2本、メロディ弦が1本。メロの音程は、この動画ではふつうに指の腹で作ってるけど、弦の反対側から指の背で押さえる場合のほうが多いみたい。

 

カレリアは中世以来スウェーデンとロシアとの係争地、東方から布教される正教会と西方から布教されるカトリック教会(のちにプロテスタント)とが鎬を削る前線。

1323年のノーテボリ条約で東西に分割。

18世紀半ばにはカレリア全土がロシア帝国領に。

1918年のフィンランド独立で大部分がフィンランド領、1939年の冬戦争と1941年の継続戦争でその一部がソ連に割譲、現在に至る。

 

ライア(竪琴)は古代ギリシャ、シュメールの昔からあるけど、その弓奏は、12世紀までに西ヨーロッパ全土で一般的になった。

現在とくに、フィンランドの東カレリアとサヴォ地域、エストニアスウェーデン語が話される地域で生き続けてる。

弓奏ライアの呼称は、フィンランドでは jouhikannel、jouhikko、jouhikas。jouhi、jousi が「馬の毛」「弓」の意味らしい。

エストニアでは、スウェーデン語で talharpa、エストニア語で hiiukannel。

 

現在に続く伝統があり、1970年代には復興の動きがあった。

「1916年、民俗学者であるA.O.Vaaisaanenはカレリアにてカンテレとヨーヒッコの曲を収集することを開始した。彼はたった一人、まだ壊れていない伝統を知る漁師のFeodor Pratshuを見つ出すことが出来たため、この収集は急を要するものとなった」(原文ママ

「1970年代のスウェーデンでStyrbjorn Bergeltが、弓弾きのライアやその他の古代の楽器の演奏と研究を始めたことから再評価・復活の機運が高まり、フィンランドエストニア、ロシアのカレリア地方でも同様な現象がおきる」

 

こちらの御記事が、フィンランドの jouhikko、エストニアの hiiukannel、ウェールズの crwth をご紹介下さってます。ドローンをもつ点が共通します。

 

今回そもそも、モラハルパ(moraharpa、スウェーデンの楽器、ニッケルハルパ nyckelharpa の前身)に関連する記述の中で、それよりも古い楽器としてヨウヒッコの名を見掛けたのだった。両者に系統的関係があるのかと思って調べてみたのだけど、後者が前者の前身、という記述は見つけられなかった。

*1:スオミの呼称を、当記事では「フィンランド」で統一してます。