スウェーデンのトラッド・バンド Frifot のバンド名は当初、メンバー3人の連名「Möller, Willemark & Gudmundson」で、「Frifot (frifot)」はデビュー・アルバム(1991年)のタイトルであり、そこに収められた曲のタイトルであり、歌詞に出てくる語だった。
この盤での担当は、
Per Gudmundson : Fiddle, Bagpipes, Vocals
Ale Möller : Mandola [Octave Mandola], Dulcimer [Hammered Dulcimer], Whitsle [Whistles]
Lena Willemark : Vocals, Fiddle, Whistle [Wooden whistle]
frifot とは、逐語的に、footloose のことらしい。
その後 Frifot 名義で
Järven(1996年)
Sluring(2003年)
Flyt(2007年)
があって、どれもお薦めだけど、どれも同趣向といえなくもない。
但し、ECM 盤
Frifot(1999年)
だけは絶対に踏まないで下さい。バンドが完全に借り猫状態。
「場」に根差した音楽であるトラッドと、ECM の、オーディオ的に完全だけど「抽象的」な空間との、ミスマッチ。
バンドの指向する完成度とはまったく別種の完成度を求められて、ヴァイタリティを発揮できないでいると聴こえる。
異化のコンテクストに置いてみることはいいことだけど、その失敗例。
私は「Frifot を聴きたい」のだが、ECM 盤では「『ECM の録音』を聴かされる」。
以前ツイッターで、緊急地震速報のアラーム音を法螺貝に、という提案を見掛けた。でも法螺貝の音は高次倍音が少なく、環境に埋もれるのではないか。
キュールニング kulning のほうが使えると思う。牛などの家畜を呼び集めるための唱法。高次倍音が、減衰せずに遠くまで届く。Gjallarhorn の曲などにも、局所的に取り入れられてる。
Frifot のメンバー Lena Willemark のソロ・アルバム "Älvdalens Elektriska" (2006年)から: