Andrew McCulloch

アンドルー・マッカロックの、"Lizard"、就中 'Cirkus' でのドラミングが好きだった。「パターン」をやらず、終始「フレーズ」だけで出来てるのが。

そのフレーズは即興性が大きく、瞬間瞬間、成り立つか成り立たないかの危うい緊迫感があった。ビートが破綻間際、というかところどころ破綻してる。

これでもしベースが単純な頭打ちじゃなかったら収拾つかなくなる、という体の。

フィールズでのパワフルなロックと全然違う。

 

'Cirkus' の、レコーディングセッション初期のランスルーを聴いた。

ふつうにアニヴァーサリーエディションのボートラで出たものなので周知のものなんだろうけど、私は不勉強で数年前つべで知った。

ドラムのテイクが、アルバムに最終的に採用され正式にリリースされたのと、どう聴いても同じだった(数小節ミュートされたけど)。

試し録り、「仮」と思って叩いたものが、どういう経緯でか、そのままアルバムに使われたようだった。

 

追記(2021年01月18日)始め

オフィシャルにアップされました。

追記終わり

 

私の「本番でこれをやるかあ」という驚きは、「仮ならこうなるよね」という納得に変わった。 

「本番」一発勝負の、ビートキープの命綱なしに生身のフレーズだけで持続を成り立たせようと懸命な結果の「緊迫」と思っていたのは、もしかしたら逆で、「仮」の、成り立たなければ録り直せばよいという状況ゆえの気楽な「さぐりさぐり」だったのか?

(いや判りません実情は)

 

フリップの人徳は、マッカロックを録音セッションの最終段階まで付き合わせることができるほど完全ではなかったのかも知れない。

次善の策として、仮テイクをまんま使ったわけだが、もし正式に録り直してたら、もっと安定した、そしてもっと面白味の無いものになったにちがいないので、結果的に正解だったのだと思う。

 

最近、こちらの御記事

を拝読した。初めのほうに、ゴードン・ハスケルの発言として、

「僕とアンディ(・マッカロック)は当時、レコーディングしていた作品にまったく興味を持つことなく演奏していただけ」

とある。

当事者の証言である。これを以てすべてをすんなり納得できる、と思いそうになる。が、なにしろ「キング・クリムゾンに対して、世界で唯一ネガティヴなOB」(上掲記事中の市川哲史氏の表現)ハスケルの言である。鵜呑みに出来ない。

 

"Lizard" 参加当時、マッカロックはマイケル・ジャイルズのファンだった、という情報もある。これは、

彼が "Lizard" に対してどのくらい積極的だったか?

ということと、

"Lizard" でのジャジーなスタイルよりもフィールズでのロックドラムのが本来の彼、と思ってよいのか?

ということを判断するのに、示唆となるだろうか?