ニュー・トロウルズの謎

じつは私未だに New Trolls を殆ど聴いてない。あまたある「然るべきタイミングで出会っていれば好きになれたにちがいない」バンドのうちのひとつ。

図式的で身も蓋も無いというか。PFM や Picchio Dal Pozzo を知ってしまったあとには聴けないというか。

でも、この 'Le Roi Soleil' は、「この路線をいちど徹底的に突き詰めておかねばならなかった、と納得させるマスターピース」とはいえると思った。

私は依怙地に「プログレが sus4 を解決しちゃいかん」と思ってる。で、それが、この曲には頻出する。

 

ところが、終盤、4'40" と 4'53" が「サード抜き」で、あれっ?と思った。大詰め、和声の手厚さが求められる筈のところに、この虚ろで貧しい響きを置くのは、どういう意図だろう? キーボードも、ギターも、白玉で動きを止めてしまう。それこそ、ここで「sus4 とその解決」を使わなくてどうする。

 

現に、ライヴでは、キーボードの和音の中で sus4 を解決してる。あとギター・パートが動いてる。5'18" と 5'30"。

1976年のライヴ盤("L. I. V. E. N. T." として知られるやつ)でも同様。

 

"Concerto Grosso Nº 2" でのスタジオ・ヴァージョンでは何故サード抜きなのか?

トラックをひとつうっかりミュートしたまんまだった、とかじゃないよね?

と、この点を殊更「謎」呼ばわりするのは、もちろん私がにわかだからで、マニアの方々にとっては研究済み、解決済みの問題なのにちがいない。

Ray Shulman

Ray Shulman のベースの、ぶっとい音色による、精緻なタイム感。

Gentle Giant の長所は「アンサンブル能力」にある。かつ、その能力は「作曲」を具現するためのもの、入り組んだ符割で多声部が噛み合う対位法を精緻に音化するためのもので、アンサンブルそのものをひけらかすためのものではない。

なので、個別のプレイヤー、例えば Ray Shulman を「いちばん好きなベーシスト」として挙げる、ということは起きにくいかも知れない。

Gentle Giant においては、ベースはウワモノで、他のパートと対等の「声部」を受け持つことが要求される。

同様に「バカテク」とされるバンドといっても、Yes は「ソリストが5人いる」みたいなバンドだ。

GG における Ray Shulman のベース・パートと、Yes における Chris Squire のベース・パートは、どちらも「よく動く」「ベースの仕事以上の仕事をする」けれども、Shulman のラインの自由さはすなわち GG の「作曲」の自由さの具体化であって、Squire のソリスト的自由さとは、内実がまったく違う。

 

私が常日頃いちばん好きなバンドとして Gentle Giant を挙げるのは、私がロックを「作曲」で聴く人だから。

 

このベースのリフが好き。静かで、なめらかで、音色が澄んで、正確で、グルーヴがある。

 

この訃報ちょっと私自身びっくりするほどコタエてる。

KORG01/WFD のシークエンス・モードで自然倍音列を使う

私が昔 KORG01/WFD(ハードシンセ)でやったのは、純正律ではなく「自然倍音列」について、平均律からどのくらいずらせばよいかを、実際に耳で聴いて近似値を探り当てる、ということです。

つまり、純音を2つ、基音と、その上の短2度~長7度、を重ねて、後者をセント単位でずらして、うなりの周期が最も長くなるポイントを探る。

その音列を、スケールの形に並べると、こうなりました。

その後もっと正確な資料を見る機会がありましたが、まあそこそこいい線行ってます。

 

グローバルモードの「スケール」には、平均律、各種純正律はありますが、倍音列は無いので、「ユーザーズスケール」で作る必要があるのです。

 

問題は、「シークエンス」モードで自然倍音列を作る方法です。

スケールは「グローバル」モードにあるので、「シークエンス」モードのソングごとにスケールを設定するとか、もちろんソングのトラックごとに設定するとかは出来ません。ソングの途中で切り替えることももちろん出来ません。

作曲・アレンジの側からの要請でいうと、倍音列は、特定のパートの特定の箇所で使うものなので、大枠たるスケールで一律に決めてしまうことに意義がありません。

シークエンスで打ち込むためには、ピッチをずらすのに「ベンダー」情報を使う。1セントがベンダーの8192段階でいうといくつの値になるのかを割り算して、必要なトラックの必要なロケーションにデータを打ち込むわけです。

ベンダーの最大幅は半音~1オクターヴの範囲で設定されるので、1セントに相当するベンダー情報の値は場合によって変わります。

 

割り算を、私は筆算でやってました。電卓もってなかったので。

I'd rather see that done on paper.

 

他人様の曲ですみません。

0'19"~ 0'23" と、1'05" から最後まで、で自然倍音列が使われています。曲全体はグローバルモードで指定した平均律によってます。

この箇所のこのパートだけを倍音列にするために、1音ごとにベンダー情報を入れてるわけですが、音が重なる部分では、1つのトラック内でそれは不可能だから、2つのトラックに交互に置かれています。

 

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