金子國義

(2015年03月17日、金子氏の訃報を承け)

 

 

私の金子國義との出会いは、アレクサンドル・ステパノヴィチ・グリーン「深紅の帆」(原卓也訳)の挿絵。

 

実家に河出書房「少年少女世界の文学」24巻+別巻2(1966-68年)

河出書房(Kawade Shobo)/少年少女世界の文学 24巻+別巻2 1966-1968年

があり、その第22巻に入っていた。

このシリーズはギリシャ神話に始まり、「グリム童話集」「不思議の国のアリス」「にんじん」…といった名作を含む。

その中に「深紅の帆」を収めたこと。

その挿絵に金子國義を起用したこと。

何たる英断!

(当時のA.グリーンの知名度って、じっさいどんなものだったんだろう?)

 

これが私の実家にあったことまで含めて、全てが奇蹟だ。

じっさい、函に描かれたアッソーリ(「深紅の帆」の主人公の少女)が、海辺に呆然と立ち尽くし、虚ろなような意志の強いような視線でこちらを見る、その清純な佇まいを、ふと目にし、強く惹かれたのでなければ、この本を手に取ることもなく、グリーンとも、金子とも、出会わず終いだった筈だ。

 

金子は、澁澤龍彦訳「O嬢の物語」の挿絵が1966年、「花咲く乙女たち」での画壇デビューが1967年、となっている。

「深紅の帆」は1967年。全くの新人の起用といってよいのだと思う。

 

これが私の金子のイメージだったために、のちに「眼球譚」「アリスの夢」(「不思議の国のアリス」とは別シリーズ)などの、グロであからさまなエロティシズムの世界を知って、戸惑った。

「清純な金子國義」って論理矛盾だよな。今にして思えば。

 

この本の背には「河出書房」とあったと記憶するが、ググってみたら「河出書房新社」は1957年からあり、単純に河出書房→河出書房新社と移行したのではないようだ。

 

フレア文庫版「深紅の帆」に金子國義の挿絵は入っていません。