下書き放出(ユジャ・ワンのスカルボ)

ラヴェル『夜のガスパール』第3曲「スカルボ」、ユジャ・ワンの演奏。

冒頭の、3音からなるメロだけでもう、びっくりする。最後の音が短めで強め。きっぱりとフレーズが切れて、これとの落差で、次に隣り合う8分休符の沈黙を深い闇の淵にする。

ただし、これは反則ではある。譜面を見ると、

最初の音にアクセントがあり、わざわざディミヌエンドが付されてる。最後の音の長さは、他の2つの音と同じ8分音符、スタカートが付いてるわけでもない。

 

2小節目1拍目の8分休符があるために、次の、2拍目のアクセントが際立つ。

譜面に忠実にやると、冒頭3音がディミヌエンドで消え入る先に沈黙がある。

ユジャ・ワンの流儀だと、この沈黙の深さが、最初の3音との落差で作られる。

後者のほうがより効果が大きい気はする。

ユジャ・ワンの演奏の切れの良さは、こういうフレーズのしっぽの処理から来てるということもあるのだろうか? 私は彼女の演奏をたくさんは聴いてないけど、これが彼女の平素一貫したフレーズ感覚なのだろうか?

 

4'21" と 4'24" で腰が浮くのは「テヌート」?と思ったら譜面は「アクセント」だけだった。

 

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