手ぶれ補正機能の効果

スマホ動画、編集段階での「手ぶれ補正」機能は要するに、動きのいくつかの要素が複合してるうちの、どれかを動きとして残し、どれかを取り除くべきものとしてスタビライズするわけだ。

手ぶれを撮ることは私を撮ること。手ぶれを補正することは私を殺すことなんだけど、手ぶれの中には「遠景を基準=動かないものと措定しての近景の動き」の要素が含まれる。近景の動きをスタビライズすることによって、遠景が逆向きのベクトルの動きを始める。手ぶれが手ぶれのうちはありふれた現象で殊更意識の対象にならないけど、手ぶれ補正によって却って動画内の動きが意識の対象になる。私は死んでない。

ちなみに、撮る時は、もちろん、わざと手ぶれさせるのではなくて逆に、つとめて完全な静止を期してる。それでも現れるものであるからこそ、それは私なのだ。

パンとかズームの動きが「手ぶれ補正」によってスタビライズされてしまうことがある。長いズーム(この動画の場合は、歩いて近付きながら撮る「人力ズーム」です。)だと、ひとつながりの補正で全部を処理できなくて、いくつかのブロックに分かれて、ブロックとブロックの繋ぎが非連続になることがある。↑の動画は、撮った時は、ただ碍子か何かの部品が朝日を受けて輝いてて、その輝度が見る方向によって変化するのが面白くて、それを狙ったんだけど、編集段階で、撮影者の動作があまり滑らかじゃなかったのを「手ぶれ補正」くんが何とかリカヴァーしようとしてくれた結果、動きの途中に幾つか不連続ポイントが出来た。これを効果として却って面白がった。