Uriah Heep 'Return To Fantasy'

ユーライア・ヒープにもうオリジナルメンバーは一人もいないのか… 」

 

Uriah Heep 'Return To Fantasy'

アレンジがスタジオ・ヴァージョンと違う。どっちが先にあったヴァージョンなのか、私は把握してない。

 

その①。

0'29" からのシンセ単音の上行は、スタジオだと

c - fis - h - d - fis - h

だけど、ここでは

c - fis - h - c - fis - h - c

で、どっちもアリ。

スタジオのほうは d を含む、ノートがひとつ増えるので、色彩が加わる。Bm/C 的不協和な色彩。

ライヴのほうは h→c という狭い音程の進行が加わる、進行の音程のヴァリエイションが増える。短2度進行と増4度進行が隣り合うのが効果的。

作曲者的にはどっちを選ぶか迷うところだと思う。

 

その②。

アレンジの差じゃなくてその実行の差だけど、第2ヴァース、0'55" ~ 1'12" の、メイジャーとマイナーを行き来する微妙なコード進行が聴かせどころなのに、ここでは正しく再現されてない。オルガンとギターというコード楽器がいて、ヴォーカルが3声でハモれて、それで和声が表現出来ないって、どうなんだ…

 

その③。

サビのアレンジは、スタジオだとヴォーカルのコーラスが付くけど、ここではそれが無くて、代わりにイントロと同じシンセの単音のメロが付く。イントロとサビは同じコード進行ということです。このシンセによるメロはこの曲の魅力を決定づける、この曲のキャラそのものといっていいので、一回性のライヴで出し惜しみしないのは正しい。

このイントロのキー=サビのキーは Cm で、ここではイントロとサビで同じメロを使ってる都合上、最後のサビのまま曲を終える(この動画の終わりがこの曲の終わりで、メドレーで 'Easy Livin'' が始まる)。スタジオでは、サビにこのメロが無い都合上、最後のサビの後さらに、このメロをもつアウトロを置く必要がある。サビ→アウトロと同じコード進行が続く単調を避けるため、アウトロは Dm に転調する。

 

スタジオ・ヴァージョン。

いまさらな曲だけど、この1曲が無かったら生まれなかったジャンル、数多くのバンド、がある筈。

この曲でプログレ欲をすっかり満たされてた、ものすごく行き届いた曲だと思ってたのは、チャイコフスキー白鳥の湖』の「情景」でロマン派欲をすっかり満たされてたのと似てる。音楽の力、言葉や絵によらずになにごとかを表現し、人の心を動かす力、を最初に思い知ったのは、この「情景」によってだった。