以前記事にした、「輸入盤も自主制作盤も流通してない九州最南端の都市にお住まいだった方」に聞き取りしたオーラル・ヒストリーには、おまけの話があった。
以下。
自分はこの都市の前に京都に住んでいた。だからこそ、この都市に「輸入盤店が無いこと」が殊更に意識された。
地元の方とのやり取りの中でこのことを嘆くと「輸入盤のほうが安いからね」と返って来た。
「そうじゃないんだよ!」と心の中で叫んだが、説明しても絶対に伝わらないことも判っていた。
安いのはアメリカ盤。当時はポンド高で、イギリス盤は滅法高かった。
京都 JEUGIA で LP 1枚が¥3,400、神戸の〇〇*1で¥3,280 だった。
そして、そもそも値段の問題じゃない。自分のとくに入れ込む分野のものはイギリス盤しか選択肢が無かった、入手すること自体イギリス盤でしか出来なかったのだ。
Industrial レーベルとか、Rough Trade レーベルとか。Throbbing Gristle "20 Jazz Funk Greats" が1979年リリース、Cabaret Voltaire "Live at the YMCA 27-10-79" が1980年リリースだから、その頃の話。
¥3,400 もの身銭を切ってしか買えないものに限って、例えば「カラヤン/ベルリン・フィルの最新録音的な立派さ」の対極にある、インダストリアル・ノイズだったり、そのカセット・レコーダによる劣悪な録音だったり、というのが面白かった。既存の価値観からいうと逆なんじゃないか。
京都の輸入盤店としてはあと、優里奈というのがあった。グレン・ブランカの CD*2 の現物を初めて目撃したのはそこでだった。店長さんはのちにレティシア書房の店長さんになる。
以上。