タイトル付け

知人の曲のタイトルに 'Blocks & Clay' というのがあった。中国の民族音楽風だったので、私は当初、石材と粘土で造られた建物群、中国の田舎の風景を描く「標題楽」なのかなと思った。

 

あとから知った。原題は「ブロック遊びと粘土遊び」で、英語のタイトルは営業の必要から直訳したものだった。

作曲における発想と作業が「音符単位かクロック単位か」「ディジタルかアナログか」、を言い表すタイトルなのだった。

つまり、A-B-A 形式の、

A が YMOファイアークラッカー」かラヴェル「パゴダの女王レドロネット」みたいに拍節的、

B が緩やかな二胡ソロで、拍的にも音程的にも連続的だし揺らいでる(センツァ・テンポとポルタメント)。

 

タイトル付け斯くあるべし。

「中国風」ということからゆけば、標題楽的に、曲が喚起しそうな視覚イメージや文物、「頤和園」とか「下放」とか、をタイトルにしそうなところ、これを拒む。音楽の純粋・自律を重んじるため。

「作曲における発想と作業」ということからゆけば、これをコンセプチュアルに提示するのもアリだが、この曲は聴感上「通俗名曲」風に楽しい体裁である。剥き出しのコンセプトではなく「作品」になり切っている。

この曲にこのタイトル、の妙味。

 

'Blocks & Clay' は、直訳の産物であるにかかわらず、可算名詞の複数形と不可算名詞が並んでいるのが意味深い。