有機生命体、リック・ウェイクマン

まず、バンド名「有機生命体」についての私の誤解について。

今まで、生命体が有機なのは当然、というか全くのトートロジーと思ってた。

Organic Organism かよと。「画像はイメージです。」かよと。

どうやら、SF のほうでは、有機でない生命体についてのイマジネイションが存分に展開されてるらしい。有機でない生命体でないほうの生命体=有機生命体、という言い方は、ふつうにありうるのだった。

バンド「有機生命体」のネーミングの意図は判らない。が、とにかくここは私の料簡が狭かった。

 

次に、彼らの曲「クレーター(食事のお礼)」(1st. アルバム『マリリンとウミガメスープ』(1990年)所収)中の、ヘンデルハレルヤ・コーラス」のサンプリングについて。

これがはずかしい理由は大きく2つある。

①選曲がベタなこと。

②「ハレルヤ・コーラス」を「ハレルヤ・コーラス」として、コンテクストごと引っ張って来てること。サンプリングを、「ハレルヤ」のテンポと拍子を「クレーター」のテンポと拍子に一致させて、乗っけてること。

この曲のこの1か所だけなら「はずみ」と片せるが、この曲はアルバム5曲目で、じつはアルバム冒頭いきなり、この「ハレルヤ・コーラス」のサンプリング音で開始するのだ。

1990年当時だから通る、という性質の問題でもない。でもこれも、バンドがバカなのではなく、バカ相手のビジネスということなんだろう。

ちなみにこの曲の作詞は大槻ケンヂで、大槻の歌ったヴァージョンも存在する(「ハレルヤ・コーラス」は出て来ない)。

 

有機生命体のつべのコメ欄に、このバンドを「個性的」と評するものがあった。私がこれを腑に落ちないのは、私にとって音楽≒作曲で、このバンドの「作曲」にはどこにも個性が見つからないから。

 

有機生命体『マリリンとウミガメスープ』は、新興インディーズ・レーベル「UKプロジェクト」の第1弾 CD だった。Discogs によると、1990年6月25日リリース。

同年8月11日には「三宅裕司いかすバンド天国」に出場、これでこのバンドを知った人が多いんだろう。

 

私じつは "Yessongs" をちゃんと聴いてなかった。アルバムと、同タイトルのコンサート・フィルムとは、別の日の収録*1なんですね!

今つべで 'Excerpts from The Six Wives of Henry Ⅷ' の、CD のオーディオと、DVD の映像を、聴いて、観て、初めて気付いた。

英語版 Wiki によると、

フィルム "Yessongs" は1972年12月15日 Rainbow Theatre、

アルバムのほうは、このウェイクマン・ソロのトラックについては、1972年11月15日と20日、2つの会場でのパフォーマンスを繋げたもの、

です。

ハレルヤ・コーラス」はどちらにも登場するが、12月収録の映像のほうには時節柄、その他に「ジングル・ベルズ」が出て来る。

以前、ロックにおけるクラシック要素の扱いについて、既成事実としてのクラシックを「取り入れる」クイーンの立場と、「それ自体が探究」なジェントル・ジャイアントの立場とを分けて、ここがわたし的「あっちとこっちの境目」と書いた。

ウェイクマンはあっちの人だ。有機生命体も、もちろん。

 

ところで、↑の動画の冒頭でアンダソンが口ずさむメロディ*2、これ

の 10'41" 目~に似てませんか? キー同じだし。

アルバム "Yessongs" でも、同じ箇所で鼻歌やってるのが一瞬確認できるけど、別メロなので、即興ではあるんだろう。

 

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サンプリングについて。

ロックにおけるクラシック要素の扱いについて。

*1:'Close to the Edge' と'Würm' のみ同一パフォーマンス。

*2:ウェイクマンのセッティングの間を繋いでるのだろうか