ジャケ

King Crimson "Islands" のジャケデザインは、美しいし、あれをお好きという方もお見受けする。

私は、あれを好きになれない、という損をしてる。

私はプログレ少女になるのに先立って天文少女だった。三裂星雲の写真は本で散々見て知ってた。なので、"Islands" のジャケは「天体写真をそのまま使った安直」と映ってしまった。

 

KC のジャケでは "Larks' Tongues In Aspic" が好き、と言っておくのがいちばんかっこよさそうだ。でも私は "Lizard" が好き。

2つのデザインは対照的といえる。私は「ぎりぎりまで削ぎ落とした造形」に打たれるけどそれ以上に、雑多なごちゃつきの中に身を置くと心地良い。

 

KC の要素のうち「シニカルなユーモア」の系譜は 'Cat Food' に始まる。'Easy Money'、'Sex Sleep Eat Drink Dream' 等々。

"Lizard" が特異なのはこれが2曲、しかも立て続けに入ってること。'Indoor Games' と 'Happy Family'。

『宮殿』と『レッド』はともにこれが入ってなくて、ともに私が好きじゃないのは、偶然。

 

ジャケ絵が曲のイメージを制限することに私は批判的だけど、どうせ聴きながら何かが目に入ってる、環境から情報を受け取ってしまうなら、私の部屋の殺風景より、ロジャー・ディーンヒプノシスかポール・ホワイトヘッドの絵に目を落としながらの方がいい。

個別の聴き手の環境を作者はコントロールできないが、聴き手の身勝手へのせめてもの抵抗として、ジャケ絵を宛がうんじゃないか?

 

P. J. Crook は、フリップが気に入ってるのだから異論の差しはさみようが無いが、わたし的に Crook と KC ってぴったりな気がしない。でもそれをいうなら Yes の音だって「Roger Dean 的」ではないだろう。 

 

KC のユーモアというと必ず思い出すことがある。

"A Young Person's Guide To King Crimson"

1975年に出た、その時点でのベスト盤。

邦題が

『新世代への啓示』

で、原題の大意を外れてはいない。が、大仰な言葉選びのセンスが、真面目さ故に、傍目には、というか現代の視点からすれば、ぎゃくに滑稽だ。当時(とくに日本では?)KC というとシリアスでへヴィーで有難い音楽と思われてたんだろう。

原題はどう見てもブリテン

"The Young Person's Guide To The Orchestra"

のパロディで、アーティスト側の意図を尊重すれば、邦題は

『青少年のためのキング・クリムゾン入門』

となる。

「1974年の "Red" を最後に解散した我々は過去の存在、若い世代はお馴染みでないでしょうが」という自虐でもあって。

こういうやんちゃなパロディ精神(そして自己批評精神)は、KC にもともと大いにあると思う。