俺はロックだぜ

実家にはロキノンのバックナンバーが何冊かあった。1980年代頃のだと思う。

ロバート・フリップやビル・ブルーフォードとのインタヴューの訳文体では、語尾が「~です」、1人称代名詞が「私」だった記憶がある。

 

フリップ「ご存じの通りキング・クリムゾンはファーストアルバムの売り上げで20年間食い繋いで来たバンドですので」

 

(インタヴュアー「しかしフリップ氏によればキング・クリムゾンは『棚上げ』ではなく『解散』だそうですが?」)ブルーフォード「彼は数年に一度そういうことを言い出すので困るのです」

 

的な。

 

いっぱんにロック・アーティストの発言を翻訳するとき、1人称代名詞を「俺」、語尾を「だぜ」「なのさ」「なんだよ」とする定型があるけど、何に由来するんだろう?現実にそういう言い回しをする人と会ったことがないんだが。

 

 

"Nursery Cryme" に『怪奇骨董音楽箱』という邦題を付けて許された当時の、洋楽の邦題ネタだけでも1記事書けそうだが、なかでひとつだけ、キング・クリムゾン『新世代への啓示』について。

これは『レッド』までの時期のベスト盤。

原題が "A Young Person's Guide To King Crimson" なので、邦題は大意を外れてはいないが、大仰な言葉選びのセンスが、真面目さ故に、傍目には、というか、現代の視点からすれば、ぎゃくに滑稽だ。当時(とくに日本では?)キング・クリムゾンというとシリアスでへヴィーで有難い音楽と思われてたんだろう。

原題はどう考えてもブリテン "The Young Person's Guide To The Orchestra" のパロディで、アーティスト側の意図を尊重すれば、邦題は『青少年のためのキング・クリムゾン入門』となる。

こういうパロディ精神、シニカルだったりお茶目だったりのユーモアは、キング・クリムゾンにもともと大いにあると思う。