Starless & Bible Black (バンド)

ゼロ年代に活動を確認できるアメリカのバンド。

つべには2009年の 2nd. アルバム "Shape Of The Shape" がフルで上がってるけど、私が好きだった2006年の 1st. アルバム "Starless & Bible Black" は、これ1曲しか見つからない:

この動画は、音質が万全ではないけど、貴重。アップ主様に感謝。

アルバムは、各種管弦楽器やグロッケンを交えたソノリティ、アシッド・フォーク的陰翳、アクースティックな音像が魅力だった。グロッケンは正義。

ここで全曲サンプル試聴出来る:

プログレ者的にはバンド名からどうしても King Crimson を連想するけど、音的な繋がりは無い。

そもそも starless and bible-black というフレーズは Dylan Thomas "Under Milk Wood" が出典なのであって、同名の音楽作品はクリムゾン以外&以前にもあるし、このバンドもクリムゾンを意識はしてないはず。

場の在り方 ②

多パートの曲で、コンサートホールで演奏されることを想定して書かれたようなものは、どのポイント(空間の)で聴くのがベストバランスか、おのずと決まってる。オーケストラ曲を録音することは、鑑賞に供するために額縁に入れることだ。

テリー・ライリー『In C』は、「聴く曲」である以前に「演奏に参加する曲」で、奏者自身がまずこの曲の聴き手だ。アンサンブルの成り立ってる空間の「只中」にいながら、各奏者各ポイントで聴いてる。

この曲では、演奏者が相互に注意深く聴き合うことが重要で、これは作曲者自身が「演奏の指針」で求めてることだ。

その『In C』、しかも野外で執り行われるそれは、どのポイントで聴き、録音するのがベストバランスなのか、ひとつに決められない。

 

CD などの録音とライヴとは別物といっても、コンサートホールの客席から聴く舞台上の、例えばラヴェルのオーケストラ曲は、「額縁に収まった」音楽であるという点で CD と同じだ。

いっぽうで、絶対に録音で代用が利かない、録音では情報の何%も拾い上げられない、という在り方の音楽がある。

酒井康志氏が8年間お続けになってる『In C』野外演奏イヴェントがまさにそれだし、あと、改めて驚くのは、ドビュッシーにその大元たる「場」についての発想があること。音楽評論集『反好事家八分音符氏』の第10章「野外の音楽」にはっきりとした形で書かれてる:

 

間の声(合唱団ではなくて!……ありがとう)をあわせていちだんと大規模にした多人数のオーケストラを、おもいえがくことができる。そのおかげで、〈野外〉のために特別につくられる音楽ーーすべてが雄大な線でえがかれ、光と自由な大気につつまれた樹々の梢の上をたわむれ舞う声と楽器の大胆な飛翔による、野外用音楽の可能性もでてくる。黴くさい演奏会場にとじこめられたら異常にきこえるような和声の連続が、野外ではきっと正当な評価をうけることだろう。音楽をぎこちなく窮屈にしている形式上のこせついた偏執や恣意的に定められた調性から、自由になる方法も、たぶんみつけられるのではないか。

(平島正郎訳)

 

ドビュッシーの「作品」はもちろんコンサートホールで演奏されるために書かれてるから、作品の中でその発想が実現されてはいないけど。

 

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Yes 'The Remembering (High The Memory)'

Yes の、4曲から成る "Tales From Topographic Oceans" (1973) の第2曲、'The Remembering (High The Memory)'。

『海洋地形学』愛の深い方でも、この曲は退屈、とおっしゃってたりするのですが、私自身は初めてこのアルバムを聴いた時から愛して已まない曲です。

曲調もぴったり来るし、歌い出しの上行と下行を繰り返して歩みを進める楽想を始め、どの箇所にも「こうであらねばならない、譲れない造形」を感じます。

浸りきって豊かに時間を過ごします。

 

 

以下、長い曲のつべをたくさん貼りますが、各モティーフが登場するポイントポイントを示すためのもので、通しでお聴き頂く必要は無いです。

 

'The Remembering' の 10'18"~(、12"49"~)のギターのメロは、第1曲 'The Revealing Science Of God' の14'31"~に既出のものです。

このモティーフ出だし、「ターーータタ」の符割で順次下行する3音。'The Remembering' 1'33"~の歌メロも、これが元になってるとも見えるし、これを畳みかけて 4'21"~のブリッジ的箇所が作られ、そして第4曲 'Ritual' 0'18"~のギターに華々しく再現します。

第3曲 'The Ancient' 6'13"~のギターとメロトロンの6度ハモりの冒頭の順次上行3音は、「ターーータタ」を反行させたものでしょうか?

'Remembering' 10'41"~(、13'13"~)の歌メロの中にも、「ターーータタ」の符割による順次下行が含まれます。これをも同じモティーフの処理の一環と見做すことを牽強付会とお感じでしょうか? でもこれには理由があります。どちらも、これ

の冒頭アンダソンが口ずさむメロが元になってると思えるのです。この鼻歌には、節(ふし)毎に、上行から始まる箇所と下行から始まる箇所とがあるので。

 

'The Remembering' 2'00"~のオルガンと 6'08"~のヴォーカルのメロは、'The Revealing Science Of God' 5'14"~の再現です。'The Ancient' 8'39"~のスティールギターにも出て来ます。

そしてこれの冒頭5音「ソラソファミ」の音形は、'The Ancient' 4'39"~、6'39"~と、'Ritual' 5'24"~にも出て来ます。

'The Remembering' 6'08"~ではヴォーカルと同時進行でギターが「ドシドラ、ソ、」とハモりますが、'Ritual' 5'24"~ではこのギターの音形が先行し、ヴォーカルと交互の掛け合いになります。同じギターの「ドシドラ、ソ、」を絡ませてることから、2つの歌メロが、作曲者的にも同じモティーフに基づくものと位置付けられてることが判ります。

 

'The Remembering' 0'00"~(、10'34"~、13'05"~)のオルガンは、もしかしたら、'The Revealing Science Of God' を通して繰り返し現れるこれ

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から来てる、と見做せるでしょうか?

 

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