Genesis "The Lamb Lies Down On Broadway" はこの11月18日でリリース45年。
Brian Eno が関わってることはクレディットにあるけど、具体的に何をやったのか?
Wiki「眩惑のブロードウェイ」によると、
「アルバムのミックス時にたまたま隣のスタジオでレコーディングしていたブライアン・イーノが、ピーターに頼まれてシンセサイザーを用いたボーカルエフェクトを行った*1」
これかな:
このアルバム、全体にアーティフィシャルな質感がある。これってイーノが齎したものなのかな?と想像したりもしたけど、そこまでの関わりではなかったみたい。じゃあこの質感の原因は何なのだろう?
上に貼った 'The Grand Parade Of Lifeless Packaging' とその前の 'In The Cage' の曲間に挿入される楽想のスケッチの、壁一枚隔てた向こうで鳴ってるみたいなエフェクト処理とか、イーノっぽいと思ってた。でも違うのか。
Genesis は基本、スタジオレコーディングならではのギミックとかが少なくて、バンド演奏をそのまま記録したもの、というのに近い。早い話、スタジオとライヴとで演奏内容の差がほぼ無い。
前作まではそうだったんだけど、"Broadway" になると、上述の質感込みで「作り込まれた作品」と感じる。この要素はライヴで再現できない。
同じアレンジの同じ音符を演奏してても、ライヴが「アルバムの再現」じゃない、アルバムが「ライヴの記録」じゃない。
この感じは曰く言い難いんだけど、でも私がこのアルバムに感じてる魅力の正体がここにありさえする。「スタジオ感」、大きな世界を遍歴するんだけど、それがじつは全てスタジオの中で完結してる、という質感*2。
まあ前作との音作りの差で一聴まず気付くのは「ベースの音色」だけど。ディストーションを施してガキゴキの、「作られた」音。
ビートルズのベースの音色が、「ペイパーバック・ライター/レイン」で「ベースギターという楽器をアンプリファイした音」とは全く別物の「稠密な電気信号」みたいな「作られた」音色になったのに匹敵する事件。
Eno 参加といえば、これも:
こっちは、演奏者として VCS3 で、'Gloria Gloom' 1曲のみに参加、ということでいいのだと思う。
このアルバム "Matching Mole's Little Red Record" (1972) のプロデュースは、Robert Fripp。
ジャケの表記で見る限り、Brian Eno名義は'Before And After Science'('77)からで、それ以前は単にEnoと名乗っている。或いはこのタイミングで弟Rogerがデビューし区別の為Brianを名乗り始めたのかと思ったが、Rogerのデビューは(→)
— 新海智子 (@coccyx_T) May 24, 2013
…いつなんだ!
*1:追記 2020年11月15日
英語版ウィキ「The Lamb Lies Down On Broadway」によると、
「アイランド・スタジオでのミキシング・セッション時、隣のスタジオでブライアン・イーノが『テイキング・タイガー・マウンテン』の作業をしていた。ゲイブリエルは彼に、いくつかの曲のゲイブリエルのヴォーカルにシンセサイザー・エフェクトを施してくれるよう頼んだ。'Grand Parade Of Lifeless Packaging' など。アルバムのクレディットで「Enossification」と称されてるやつ。お返しとして、イーノはコリンズに 'Mother Whale Eyeless' でドラムを叩いてくれるように頼んだ」
*2:追記 2020年11月18日
三善晃「オンディーヌ」について同じことを言ってた:
「拮抗しつつ綯交ぜになるスリリングさはむしろ、この音楽が思い描かせる『物語世界』と、即物的な制作現場の『スタジオ感』との間に生じてる、そこが美しい」
ことさら繋げて考えてなかったつもりだけど、同じ「スタジオ感」という言葉を使ってるくらいだから、やはり繋げてたのかな?