私はあなたを愛する。
私はあなたを、あなたがあなただから、愛する。
個である私が個であるあなたを愛する。
「タイプ」は、評論家が音楽を言葉で紹介する便宜上、必要な場面はあるだろうけど、聴き手がアーティストや曲を「愛する」のに、「タイプだから」は有り得ない。
ツィプレッセンを愛するのはツィプレッセンだからで、ジュルヴェルヌタイプだから、ではない。
だいいち実際にお会いして、ある程度お付き合いしてみ*1ない事には、私がその曲を愛するかどうか、私自身にだって判らない。タイプじゃないからと予めはじくのは、損である。
アイドルへの質問項目によく「好きなタイプは?」がある。
タイプに当てはめて人を評価することは、厳粛なる「個」への冒涜である。
でも将来私がアイドルになった時それを避けて通ることも出来ないので、回答の準備はしてある。
Q:好きなタイプは?
A:「マカフィー」のアクセントの位置を問われて「ー」と答えるタイプ
「好きなタイプは?」への回答としてよく「やさしい人」というのがある。「他人や生き物一般に対してやさしく接する博愛の人」という意味ではあるのだろうけど、そこに「自分に対してやさしくしてくれる人」という真意を読み取れる。
その人を愛する理由は、自分に対してどう接してくれるかに係わらず、その人が如何にその人自身であるか、にある筈なので、違和感がある。
Zypressen / Zypressen(Belle Antique BELLE 96195、1996年)
追記(2022年05月10日)始め
上がってるじゃないか! どう捜しても見つからなかったのに。
追記終わり
このアルバムのプロデューサーは Chihiro S. 氏、というわけで、ラクリモーザを。
ラクリモーザにおいてベースはウワモノであり、過剰なエフェクト処理で際立つ音色でメロディを奏する。
上掲ツィプレッセンのアルバムでは、ベースの音色に Chihiro S. 氏の影響が明らかだ。
ツィプレッセンの曲の構造はリフが基本(有機的な造形のリフであるとはいっても)なので、ラクリモーザの変幻自在と較べて硬直した印象がある。
ラストナンバー「交差衝動」は、1991年の京浜兄弟社のオムニバス『誓い空しく』に「すべての縦縞は交差したがる」のタイトルで収録されていた(別録音)。
*1:2020年09月04日
お会いし、お付き合いしてみるのは「その曲と」です。為念。