①
鈴木さえ子はラヴェルかもだけど、美尾洋乃はドビュッシーだぜ。
Solid から出た美尾洋乃の2枚のソロアルバム「フルーツ・オブ・ザ・ムーン」と「クロエ」。
就中2枚目「クロエ」、音楽の不可能性に苛まれてた私は、これを聴いて、もう一度音楽の力を信じられるようになったのだった。
これらソロ作が世間でどのくらい知られててどう評価されてるか、知らない。もしかしたらリアル・フィッシュやミオ・フーほどは有名じゃないかも??
ここは重要なところなのだが、曰く言い難い。
私の勝手な印象として。
むろん鈴木さえ子の作曲は実に立派だし私の趣味に合致もする。
だが、美尾洋乃は、音楽の「象徴」の力が言い当てている「深さ」が、まったく別次元だと思う。
ラヴェルよりもドビュッシー、ショパンよりもシューマン、リムスキーよりもムソルグスキー、マッカートニーよりもレノン、という方には、美尾洋乃の2枚のソロアルバムは、切実に重要な音楽たりうるのではないか。
そして、バッハ「平均律クラヴィーア曲集」やドビュッシー「プレリュード」は第1巻よりも第2巻、あるいはシュトラウス「サロメ」よりも次の「エレクトラ」を取るように、「クロエ」は、前作と同傾向でいて二番煎じではなく、より「深く」を言い当ててる。
もちろん鈴木さんは浅薄じゃないし、美尾さんは不器用じゃありません。念の為。
つべにこれがあった。1か月前に上げたて。
私は「約束の天使」「睡蓮」のほうが「深い」と思うけど、とにかくアップ主様に感謝!
これは以前から拝聴してた。
追記(2019年11月23日)始め
その後「睡蓮」がアップされた。
追記終わり
②
私のニック・メイスン観は「ピンク・フロイド中唯一のカンタベリー人脈」。
いっぱんにバンドの「音響」の斬新はキーボーディストに帰して考えがちだが、VCS3を買ったのはたしか(リック・ライトではなく)メイスンだったと記憶する。
私のプログレ入門は『狂気』だった。そのオープニング曲 'Speak To Me' はメイスン曲。
つまり私の耳に最初に鳴ったプログレは、この、心音に始まるサウンドコラージュだった。
当初はこれが「音楽」の範疇なのか、戸惑った(小学6年生でした)。実際のところは、これと、これに導かれてメドレーで始まる次曲 'Breathe' の「音楽的な」美しさとのギャップに感動したのだった。
メイスンの仕事の中で、ソロアルバム "Nick Mason's Fictitious Sports" がどのくらい知られててどう評価されてるか、知らない。
私はピンク・フロイドは(『狂気』がプログレ入門だったとはいえ、またシド・バレットは別として)ピンと来ない。このメイスンのソロアルバムの「ポップな諧謔」のほうが、私にとって「プログレ」だ。
作詞作曲は全曲カーラ・ブレイだし、メインヴォーカルはロバート・ワイアットだけど。
そして白眉はアルバム中で異色のこれ:
以上、今回は「言葉が上滑りして、言いたいことを的確に言えてない」感があり、更新が滞った。
でもじつは「言いたいこと」がもともと上滑りしてるのだった。
空疎を充実と言いくるめるために、ヒトは、私は、言葉を発するのではない。
空疎のまま提出する。