いつだったかスキージャンプの実況で「89メーターごじゅう」という表現を聞いた。
「ごじゅう」とは何ぞや??
いっぱんに、1つの値を、2つの単位を付けて表現することが多い。これは日本語特有の表現だろうか?
「1メートル50センチ」とか。
これはたんに私個人の馴染みの問題かもしれないが、「150センチメートル」または「1.5メートル」、有効数字の桁数に応じて「1.50メートル」がしっくり来る。
そもそも「センチ」は接頭語で、単位ではない。「センチメートル」を「センチ」と言い習わすのはものすごく一般に行われるけれども、「センチ」は「長さ」について何も表現していない。
日常会話で「1メートル50センチ」と発話するのは、まだしも煩雑を避ける意義があるが、これが字幕で「1m50cm」と書かれた例を目にして、記者の頭の中の世界はさぞ雑然としてるのだろうと憐れんだ。
単位でなく接頭語で値を表現すると、じっさい誤解を招くことがある。道路交通情報で「キロ」を使うと、渋滞の長さについての「km」なのか、速度制限についての「km/h」なのか、紛らわしい。
風速について「毎秒」を省略して「メートル」と言うのは、マイナスの教育的効果があると思う。この単位に初めて接する子どもにとって、「速さ」がなぜ「長さ」の単位で表現されるのか、謎だと思う。私はそうだった。
単位を正確に読むことを世の中が励行していれば、それに接して、子どもたちが自然に風の「速さ」をイメージするようになると思う。
「まいびょう」のたった一言を発するのに要する時間を節約する効果と、子どもたちが、速さが長さと時間とで表現されることを自然に学ぶ効果と、どちらが大きいか、重要か。
で、「ごじゅう」。
映像を見ると、ジャンプ競技はどうやら0.5メートル単位で飛距離を計測してるようだ。センチメートル単位ではなく。
たぶん一番妥当な表現は「89.5メートル」だ。
だがこれも、私個人は違和感がある。「.5」は、「.0」から「.9」までの値を取りうる事柄について、「.4」でも「.6」でもない他ならぬ「.5」であることを表す場合に使うべきで、「1メートルの半分」は「半メートル」でいい。
わたし的正解は「89メートル半」だ。
とにかく「8950センチメートル」「89.50メートル」ではない。「8.950×10m」でもない。
まず「ごじゅう」には単位が付いてないので、話にならないが。
Fifty Foot Hose のCDとの最初の出会いは、地元の、個人経営の小さな中古CD屋さんでだった。
輸入盤専門店でもサイケ専門店でもなく、目的意識なく立ち寄って、偶然見かけ、予備知識なく買った。
とにかくこのバンド名で、単位を表す名詞は、形容詞的用法では単数形を取るのだ、ということを知った。
いやそれ以前に Nine Inch Nails とかあったでしょうが!