武満徹「ドリームタイム」

最初に知った武満は何だったか?

実家にあったアナログ盤2枚組『武満徹~作曲家の個展~'84』か、あるいは松田洋子『薫の秘話』中のネーム

武満徹『エアー』」(最上品美のセリフ、むしろわけわからない音楽の代表として)

を読んだのが最初だったかも知れない。

最初に心底魅了された曲は、件の2枚組所収「ドリームタイム」で、演奏は岩城宏之NHK交響楽団

 

この1曲を好きになった経緯はどんなだったか。

響きの豊饒、ディテールの緻密な絡み合い、ときに滑稽なまでにエロティックな運動性、に夢中になったわけだが、武満のオーケストラ曲の中でこの曲が殊更そうなのか。

または、アルバムを渋々聴き進んでいた私の耳が、武満の音楽に馴染んで来たところでこの曲に差し掛かった、タイミングの問題だったのか。

 

つべにはこの演奏が上がってる:

この演奏は、スタティクさが、音を無難に並べに行ってる風に聴こえて、彫琢が足りなくてなまくらかなあ。前述の、この曲に聴き取っていた特徴「豊饒、絡み合い、エロ」は、岩城/N響なればこそだった、と思う。

ちなみに同じ岩城宏之で、のちにCDで聴いたメルボルン交響楽団とのこの曲は、物足りなかった。でも、複雑なオーケストレイションの曲は、どんな分析的な解釈・演奏でも、全てのパート、全ての出来事をマスキングすることなく聴かせる、ということが不可能だから、別演奏には必ず新発見があり、もれなく貴重だ。

 

追記(2019年01月23日)始め。

その後岩城/メルボルン響がアップされた。

追記終わり。

 

追記(2021年02月21日)始め

今つべで聴ける中で最も理想的な演奏はこれだと思う:

山田和樹/日本フィルハーモニー交響楽団、2017年05月14日。

私の聴きたいディテイルが、全部聴こえるし、くっきりと造形されてる。

響きも、すっきりと、美しい。

追記終わり

 

追記(2023年05月02日)始め

2021年07月リリースの『1982 武満徹 世界初演曲集』から、岩城/札幌交響楽団による演奏。

細部の扱いを疎かにしなさはN響とのもの以上。やや無骨かも。

追記終わり

 

NHK交響楽団は、私にとっては、この曲との特別の出会いと、山根明季子「水玉コレクションNo.06」と、いつぞやTVで聴いたデュトア指揮での完璧なドビュッシー「海」なので、印象はすこぶる良いのだが、身辺ではいったいに評判が悪い。

曰く、「及第点」、サラリーマン根性、給料以上の仕事をしようとしない、N響と東混で感動したためしがない、本当に音楽愛してんのか⁈…云々。

彼女らは2回りほど先輩なので、N響自体が時期によって良否があるのだろうか?

 

今でこそ武満は「多様な日本人作曲家のうちの1人」だけど、私が聴きだした頃は、日本の現代音楽全体を1人で代表してるような存在だった気がする。

亡くなってまだ数年だったし、なんというか、武満の名を唱えておきさえすれば現代音楽知ってる顔をしていられる的な風潮が嫌で、私自身、彼へのこだわりが薄れた時期がある。

 

あと、マジカル・パワー・マコの2nd.のライナーノートで、初期のマコにとって計り知れず大きかった存在として、武満徹に言及されてるのを見たのも、同じ頃だった。