コンクリートミキサー系

マンション建設工事がすぐお向かいで始まり、自室でその音を聴いていた。音でだけ聴いてるので、何の工具をどう使って出してる音なのかは判らなかった。

以下、私が勝手に想像した建設現場風景。

 

数人で槌を打つ音。1人の作業者にとってはトントントンという単純なビートだが、各人がそれぞれのBPMで数人重なって、モアレ的な複雑なリズムを生んでる。

 

ブーーーンという低音の持続音を出す機械は、コンパネの間に流し込んだコンクリートを隙間なく詰めるために振動を与えるヴァイブレーター。コンパネに接触すると、コンパネを共鳴させて、大きな音になる。押し付けるとピッチがベンドダウンしてうなりが生じる。押し付ける強さの加減によってコンパネの固有振動数に近付いたり離れたりして、うなりの周期が変化する。

 

ゥウイィン、ゥウイィン、というリフは、コンクリートミキサーの回転。リフといっても、中のコンクリートの状態の変化で、節回しが微妙に変化してゆく。

 

これらの音源が、30㍍四方の空間に配置され、近くの音はオンに、遠くの音はより深いリヴァーブを伴って、自室に届いてきた。トータルとして、交響曲みたいだった。

 

 

私の思う音楽のカテゴリーで「コンクリートミキサー系」というのがある。

カテゴリーといってもごく緩い基準で、音が、どのタイミング、どの音量、どの音高、どの音色で鳴るかを、作曲技法に随わせてではなく、音の物理に随わせて決める、という点で共通するあれこれ。記譜としてはキメキメじゃないが、じっさいの空間の中で条件がこうだと音は必然的にこう鳴るよね、という物理への沿い方は厳密、というか。

 

この呼び名が浮かんだのはスティーヴ・ライヒの 'Pendulum Music' を聴いた時で、それまで私の関心の中心に無かったこの作曲家が、俄然切実に重要になった。

音でだけ聴いてて、どうやって作ってるのかは全く判らないまま、出音の感触だけから「これはコンクリートミキサー系だ!」と言ってたが、最近ある方からライヴ動画を教えて頂いて、もうまさにまさに。

 

同じ方から、もうひとつ教えて頂いた。

この Gordon Monahan "Speaker Swinging" については、LP を、SHE Ye,Ye さんのサイト

で視聴させて頂いていたが、ライヴ動画で、圧倒的に納得した。