「テープ音楽」
20世紀音楽の2つの潮流、「電子音楽」と「ミュージック・コンクレート」はもともと別の、むしろ相反する立場だ。
電子音楽は音を管理し操作し組織する。そのために扱いやすく純化され馴化された「楽音」を要素とする。その意味で従来の音楽の方向に沿いこれをさらに突き詰める。12音音楽や、メシアン「音価と強度のモード」を源流とする。
ミュージック・コンクレートはそれまで音楽の要素の埒外にあった「噪音」にまで聴覚を拡張する。ヴァレーズを源流とする。
これら2つは、しかし実際の作業はどちらもテープ上でなされるため、「テープ音楽」として統一されてゆく。
「ビートルズ」
ビートルズにおいてテープレコーダは「記録」の道具ではなく「表現」の道具だった。
「イーノ」
『ディスクリート・ミュージック』においてイーノは作品を構築しない。テープレコーダを使ってシステムを組み、その中に音の素材を投入して、成り行きを見守る。
「記憶媒体」
最も確実に正確に情報を後世に伝える記憶媒体は、ヒトの脳の記憶、口伝による伝承じゃないか?
紙なりテープなりディジタルなりの外部メモリーに頼ることで、ヒトの、記憶媒体としての根性が退化したのは間違いない。
「フェティッシュ」
テープならではの音の質感とか、さらには撚れによる欠落とかノイズとかのほんらい克服されるべき欠点に対してまで、価値を見出してしまう。是か非か。