ミシェル・ポルナレフをきっかけに

NHKラジオ深夜便の愛聴者だった時期がある。

ある日 Michel Polnareff のデビュー曲を、「コード3つだけで書いた」という前説に続いて、聴いた。

TDS の3つ(キーが E の曲なので EBA

を予想したら、

TSSS(ドッペルサブドミナント)(EAD

の3つで、斬新にびっくりした。

 

1980年に Christina Monet がカヴァーしてる。

ZE Records は1978年設立、Contortions、James White & Blacks、Lydia Lunch、Arto Lindsay ら "No New York" の残党、Lizzy Mercier Descloux、Suicide、John Cale などを擁した。

 

コードが3つといえば、やはりラジオ深夜便で The Carter Family 特集を聴いたことも貴重な体験だった。

じつは放送を聴いた時私はまったくピンと来なかった。ぎゃくに、どれも同じコード進行、同じハモり、ハモりといってもコードに含まれる音のどれかをなぞるだけ、の曲をたて続けに聴かされて、退屈した。

T、D、S のコード3つの曲が続く中、1曲、キーを憶えてないけど仮に C がキーとして、A→D→G→C というコード進行の曲があって、彼ら的にはチャレンジングだったにちがいない、と思った記憶がある。

カーター・ファミリーはとくにギターの奏法が革新的だったのだが、その「コードストロークでビートを刻みつつベースラインやメロディを折り込む」奏法は、以降のアーティストたちにさかんに採用され、すっかりスタンダードになってしまっている。

カーター・ファミリーの斬新に気付くには、勉強が必要だ。

 

いっぱんに、革新は、その影響が大きいほどスタンダードになるので、最初にその革新を行なった者の功績に気付きこれを評価するのには、勉強が必要だし、知識としてだけでなく実感としてピンと来るには、タイミングなり偶然の経緯なりが必要だったりする。

 

スタンダードとして定着したものはそれを踏み台にして次の革新を行なえばいい。

いっぽうで、「歴史的に斬新」という評価を超えて、いつどの状況下で聴いても斬新、という音楽もある。

絶対に凌駕されない、モーツァルトとか。