(2016年3月23日、記)
アメリカのプログレバンド Fireballet の、2枚あるうちの1枚目のアルバム "Night On Bald Mountain" (1975) のピエス・ド・レジスタンスは、もちろん、ムソルグスキー「はげ山の一夜」をカヴァーした表題曲。
19分近くあって、9分40秒目から、ドビュッシー「沈める寺」も登場する。
つべにあがってるけど、ちょうどこの箇所で針飛びがあるようだ。
このアルバム中の 'The Fireballet' という曲にも引用がある。
これ
の3分01秒目~3分13秒目が、これ
の2分34秒目~2分54秒目からのそのままの引用。
この引用を指摘した記事を見つけられない。
マニアックなバンドによるマニアックなバンドからの引用は、あまり気付かれてないのだろうか?
Egg が後進のレファレンスになってる例。
Egg の、ことにこのアルバム "The Polite Force" について、私は、出来栄えを鑑賞される作品というより、アイデアをそのままゴリゴリ提示して見せたものという印象を持ってて、取っ付きにくいけど、そのぶん玄人受けするというか、後進に作曲技法上のストレートな影響を与え得たのでは?と想像してる。
追記 3月25日
迂闊にも気づいてなかったけど、聴き直すと、引用はその数小節前、'The Fireballet' でいうと2分48秒目から、'Long Piece No.3' でいうと2分27秒目から、始まってるのだった。
ベースラインはそのまま引用。
原曲のオルガンのメロとコードは、コーラスに移されてる。前半は4度下げて、後半はそのままの高さで。
むしろ引用の本体はここというべきだ。
こうなった作曲の経緯を想像してみる。
【'The Fireballet' でいって2'48"~3'01"、ここが引用の本体】
最初から意識的に引用を企んだというより、曲の構成上この箇所に欲しいコーラスひとくさりのメロや和声が、どうしても Egg になってしまうし、それをいたずらに変形してオリジナルとすることが真のオリジナリティか疑わしくなって、いっそ引用という形にした。
【同じく3'01"~3'13"】
その勢いのまま、次のブリッジ部分でも引用を続け、しかもここを「完コピ」にして、引用の種明かしとした。ほんとうの気の効いたシャレというべき思い付きだ。
Egg 研究で身に沁みついたフレーズが自然に発露した風だし、あるいはストラヴィンスキーなども参照され、綯い交ぜにされ、結晶化されて、作曲者の自家薬篭中となったものなんだろう。